第4章5節: 噂は風に乗って
私の懸念は、残念ながら的中した。カイとリリアが村で「ハルカさんが作った、ものすごく美味しい甘いもの」について吹聴して回った結果、私の作ったジャムは瞬く間に村中の注目の的となった。
さらに悪いことに、誰かが私のジャーキー(私が偶々リリアにお裾分けしたもの)を食べたところ、「なんだか力が湧いてくる気がする」「疲れが取れた」などと言い出したことから、事態はあらぬ方向へと転がり始めた。
「聖女様の【じゃあきい】とやらを食べると元気になるらしい!」
「あの甘い【じゃむ】というものは、心を癒す力があるそうだ!」
「さすが聖女様、我々のためにありがたい食べ物を作ってくださったのだ!」
腹痛騒動の際の「聖女」という誤解が、新たな「ご利益のある食べ物」伝説と結びつき、とんでもない形で増幅されてしまったのだ。私の意図(=研究時間の確保)とは全く逆に、私の作る保存食は「聖女様の恵み」として、村人たちの間で熱狂的に語られるようになってしまった。
リリアは困惑しながらも、「でも、本当に美味しいし、元気が出る気がするんだもん」と私の肩を持つのか貶めるのか分からないことを言い、カイに至っては「やっぱりハル姉ちゃんは聖女様なんだ!」と胸を張っている始末だ。
ボルガンは、この状況を苦々しいような、それでいて少し面白がっているような、複雑な表情で眺めている。彼は真相……つまり私が単に合理的な方法で保存食を作っているだけ……に薄々気づいているのかもしれないが、村の雰囲気を壊すこともないと判断しているのか、特に何も言わない。
こうして、私の作った「自分用の保存食」は、本人のあずかり知らぬところで、ありがたい「聖なる食料」へと祭り上げられてしまったのである。




