第4章3節: 最初の保存食:改良ジャーキー
保存食開発の第一弾として、私は村の干し肉を改良することにした。あの硬くて塩辛い代物は、保存性は高いのだろうが、そのままでは食べる気になれない。
まず、手に入れた干し肉を、浄化魔法をかけた水で丁寧に塩抜きし、柔らかく戻す。次に、薄くスライスし、前世のレシピを参考に調味液に漬け込むことにした。醤油はないので、試作中の木の実発酵液(つまり醤油もどきだ)と、採取した香辛料代わりの実(好み的にピリ辛のものにした)、甘みとして煮詰めた樹液を使用する。
漬け込んだ肉を、今度は乾燥させる工程だ。天日干しでも良いが、時間がかかるし、天候にも左右される。ここで魔法の出番だ。
私は肉を網(蔓で編んだもの)に並べ、微弱な火魔法で周囲の温度を僅かに上げ、同時に習得したての風魔法(というより、指向性を持たせた空気の流れを作る程度のもの)で、肉の表面の水分を効率的に飛ばしていく。温度と湿度を管理しながら、じっくりと乾燥させる。
数時間後、見事なジャーキーが完成した。見た目は濃い飴色。指で触れると、硬いが、パキッと折れるような脆さはない。適度な弾力がある。香りも、獣臭さは消え、醤油もどきと香辛料の良い香りがする。
早速、試食してみる。
「……ふむ、悪くない」
噛むほどに肉の旨味が滲み出し、ピリ辛の刺激と甘みが後を引く。塩加減もちょうど良い。これなら、常温でかなりの期間保存できるだろうし、何より美味しい。研究の合間のエネルギー補給に最適だ。
私は満足して頷き、完成したジャーキーを保存用の壺に入れた。あくまで、自分用に作ったものだ。
まさかこれが、新たな騒動の火種になるとは、この時は思いもしなかった。




