第3章11節: ジェイドの複雑な視線
村が活気を取り戻し、人々が私を「聖女様」と(誤解して)崇める中、一人だけ複雑な表情で私を見つめる者がいた。狩人のジェイドだ。
彼は今回の騒動で体調を崩すことはなかったが、村の変化と、その中心にいる私を、どこか納得いかないような、それでいて無視できないような、奇妙な目で見ている。
以前のようにあからさまに突っかかってくることはなくなった。おそらく、私が提供した「干し肉のハーブ煮込み」の味が忘れられないのだろう。そして、実際に私が村の危機(と彼らが認識しているもの)を救ったという事実も、認めざるを得ないからだ。
しかし、素直に感謝したり、他の村人のように私を崇めたりすることも、彼のプライドが許さないらしい。私が村を歩いていると、遠くからじっとこちらを見ていることがある。目が合うと、気まずそうに逸らす。
ある時、リリアが私のために薪を運んでいると、ジェイドがやってきて、ぶっきらぼうに「俺がやる」と言って薪をひったくり、私の小屋まで運んできたことがあった。礼を言う私に、彼は「べ、別にアンタのためじゃねえ! リリアが大変そうだったからだ!」と顔を赤くして言い捨て、逃げるように去っていった。
……ツンデレ、というやつか?
前世の知識が、また一つ余計な示唆を与えてくる。解せない。彼の行動原理は、私にとって最も解析が難しい対象の一つかもしれん。
だが、実害はないどころか、結果的に労働力が提供されたのだから、良しとするか。私は彼の複雑な感情には気づかないふりをして、運ばれてきた薪を整理し始めた。




