32/283
第3章12節:新たな噂と次なる予感
アッシュウッド村を襲った原因不明の腹痛騒動は、ハルカというエルフの「聖女」が、不思議な知識と力で解決した――という形で、村の歴史(?)に刻まれることになった。もちろん、真相は衛生管理と加熱調理の徹底なのだが、その事実は都合よく忘れ去られ、あるいは「聖女様の奇跡の一部」として解釈された。
水を煮沸する習慣、食材をよく加熱する習慣は、幸いにも「聖女様の教え」として村にある程度定着したようだ。これは衛生環境の改善という点で、良い副作用と言えるだろう。
そして、新たな噂が村の内外に広まり始めていた。
「アッシュウッドの森に住むエルフの聖女様は、病を治す力を持っている」
「その聖女様が作る料理は、食べたことのない美味しさで、心まで癒される」
「どんな病も、聖女様の料理を食べれば治ってしまうらしい」
尾ひれがつきすぎている。
私は報告に来たリリアの話を聞きながら、こめかみが引き攣るのを感じた。私の本分は研究だというのに、なぜこんな誤解が広まってしまうのか。静かに研究に専念させてほしい。
リリアは「でも、ハルカさんのおかげでみんな元気になったのは本当だし!」と嬉しそうだが、私は今後の面倒事を予感せずにはいられなかった。




