第3章10節: 回復と感謝、そして誤解
翌日、結果は明らかだった。私が「特別な食事」を提供した患者たちの症状は、目に見えて改善していたのだ。腹痛は和らぎ、倦怠感も薄れ、少しずつ食欲も戻り始めていた。
一方で、私の指示に従わず、以前と同じように生水を飲んだり、加熱不十分な食事を続けたりした者は、依然として体調不良を訴えている。
この対比が、私の仮説の正しさを雄弁に物語っていた。
ボルガンは、この結果を村中に伝え、改めて「ハルカ殿の指示に従うように」と通達した。水を煮沸すること、食材に十分に火を通すこと。最初は面倒くさがっていた村人たちも、実際に症状が改善した事実を目の当たりにし、渋々ながらも従い始めた。
すると、どうだろう。数日後には、村全体の体調不良者の数が激減したのだ。完全に回復する者も増え、村には徐々に以前の活気が戻りつつあった。
村人たちの私を見る目は、完全に変わっていた。疑念は消え去り、代わりに溢れんばかりの感謝と、そして、畏敬の念が向けられるようになった。
「ハルカ様! ありがとう!」
「あなた様のおかげで助かりました!」
「まさに聖女様だ……!」
どこへ行っても感謝の言葉を浴びせられ、中には拝もうとする者まで現れる始末だ。リリアは「すごいよハルカさん!」と手放しで喜び、カイは「僕の言った通りだ!」と得意げだ。
私はただ、「原因は衛生管理と加熱不足だ。今後は注意するように」と事実を述べるだけなのだが、それが逆に「《《聖女様は謙虚でいらっしゃる》》」と、さらなる誤解を生む結果になっていた。
飯テロ聖女。
不本意極まりない称号だが、どうやら私は、この村でそういう存在として認識されてしまったらしい。面倒なことになったものだ、と私は深くため息をついた。




