第3章9節: 聖女の(?)施し
ボルガンと共に、症状が重い数人の患者――特に衰弱している老人や子供――の元を訪れた。
ボルガンが事情を説明し、私が作った「特別な食事」を試してみるよう促す。
村人たちは、ボルガンの言葉と、私の真剣な(ように見えたらしい)表情に、半信半疑ながらも頷いた。
私は、まず清潔な水(煮沸したもの)を少量ずつ与え、脱水症状の緩和を図った。
その後、温かいパン粥をゆっくりと食べさせる。
味はともかく、温かく消化の良いものは、弱った体には受け入れられやすいはずだ。
次に、干し肉の煮込み。これも少量ずつ、様子を見ながら与える。
「……なんだか、体が温まるようだ」
「お腹が、少し楽になった気がする……」
患者たちからは、驚きと安堵の声が漏れ始めた。プラセボ効果もあるのかもしれない。だが、少なくとも、毒性のあるものを摂取させたわけではないという確信はあった。
私は各家庭に、残りのパン粥と煮込み、そして煮沸した水を置いていき、「他のものは口にせず、これを少しずつ食べるように」と指示した。そして、「生水は絶対に飲まないこと、食べ物は必ず中心部までよく火を通すこと」を、ボルガンの権威も借りながら、強く念押しした。
村人たちの反応は様々だった。感謝する者、まだ疑いの目を向ける者、そして、私の行為を「魔法か何かだ」と囁く者。
特にカイなどは、私が料理を配って歩く姿を見て、「やっぱりハル姉ちゃんは聖女様なんだ!」と目を輝かせていた。その声が、他の村人たちの耳にも入る。やめてほしい。
「聖女様……? そうか、これは聖女様の奇跡の食事なのか!」
「病を治す不思議な力……!」
誤解が、加速していく。私は内心でため息をついたが、今は反論している場合ではない。まずは、患者たちの回復が最優先だ。彼らが回復すれば、私の仮説の正しさが証明され、結果的に村全体の衛生観念の改善に繋がるだろう。そう合理的に判断することにした。




