第3章5節: ハルカの現場調査
ボルガンの協力を得て、私は本格的な現場調査を開始した。まずは、体調不良を訴えている村人たちへの聞き取りと簡単な診察(もちろん、医療行為ではなく観察と情報収集が主目的だ)からだ。
リリアを伴い、数軒の家を回る。患者の顔色、舌の状態、腹部の触診(抵抗がないか、張りはどうか)、体温の確認(手の甲で触れる程度だが)。
症状の具体的な内容、発症時期、直近の食事内容、行動範囲などを改めて詳細に聞き取っていく。
「ふむ、下痢の症状もあるのか。脱水には注意が必要だな」
「食欲不振と倦怠感……特定の臓器への負担か、あるいは全身性の影響か」
「発症時期にばらつきがあるのが気になるな。共通の感染源なら、もっと同時期に集中するはずだが……」
私は観察結果と聞き取り内容を、持参した炭と木の板(簡易メモ代わり)に記録していく。その冷静かつ手際の良い様子に、リリアだけでなく、診察を受けた村人たちも、不安げながらもどこか頼もしさを感じているようだった。
次に、村の生活環境の調査だ。主な水源である井戸と小川の水を採取。水の色、濁り、匂いを確認する。井戸の構造、周囲の衛生状態もチェック。ゴミ捨て場の位置、家畜小屋との距離。
食物の保管状況も確認した。共有倉庫の穀物、各家庭での干し肉や乾燥野菜の保存方法。ネズミや虫の被害はないか。
調査を進める中で、いくつかの気になる点が見えてきた。村の衛生観念はやはり低い。井戸の周りに家畜の糞尿が流れ込みやすい構造になっている。食物の保管も、必ずしも衛生的とは言えない。
しかし、これらは慢性的な問題のはずだ。なぜ今になって、これほどの規模で体調不良者が続出しているのか? 何か、引き金となる特定の要因があったはずだ。




