第3章3節: 村人たちの憶測と不安
原因不明の体調不良が続く中、村には不穏な噂が広がり始めていた。経験したことのない状況に対する不安が、人々の心を蝕んでいく。
「なあ、やっぱり森の神様の怒りに触れたんじゃねえか? 最近、よそ者がうろついてるから……」
「あのエルフのことか? 確かに、あいつが来てからおかしくなった気がする」
「変な草とか集めてただろ? 何か呪いをかけたのかも……」
直接的ではないにしろ、私への疑念や責任転嫁の声が大きくなっているのを、リリアは心を痛めながら私に伝えてきた。
「みんな、不安だから……つい、変なこと言っちゃうんだよ。ごめんね、ハルカさん」
「気にする必要はない。非合理的な憶測に意味はないからな」
私は淡々と答える。彼らの感情的な反応は理解できる。未知への恐怖は、時に理性を麻痺させる。重要なのは、事実に基づいて原因を特定し、解決策を提示することだ。
一方で、別の噂も囁かれていた。
「でもよ、あのエルフ、薬草にも詳しいんだろ?」
「ああ、ボルガンさんも言ってた。毒と薬を見分けられるって」
「カイんとこのリリアが言ってたぞ。熱出した奴が、あいつが言ってた葉っぱ飲んだら良くなったって」
「もしかしたら、この腹痛も治せるんじゃねえか?」
私への疑念と同時に、ある種の期待感も生まれているらしい。知識を持つ者への、原始的な畏敬と依存。これもまた、人間社会の一側面か。
どちらの感情も、私にとっては大差ない。重要なのは、私が事実を解明できるかどうか、ただそれだけだ。しかし、この期待感が、後の「聖女誤解」を加速させる要因の一つになるとは、この時の私はまだ予測していなかった。




