第3章2節: 原因不明の腹痛
翌日、リリアがもたらした情報は、事態が思ったよりも深刻であることを示していた。腹痛や倦怠感を訴える村人は、全体の三割近くに達しているという。特に子供や老人の症状が重い傾向にあるらしい。
村の空気は重く、活気が失われている。畑仕事や狩りに出る者も減り、広場に集まる人々の顔にも不安の色が濃く浮かんでいた。
「一体、どうしちまったんだ……」
「森の神様の祟りじゃねえのか?」
「いや、きっとあのエルフが来てからだ……何か良くないものを持ち込んだんじゃ……」
井戸端で交わされる会話には、原因不明の状況への恐怖と、私への疑念のようなものまでが混じり始めていた。リリアは慌てて「ハルカさんは関係ないよ!」と反論しているが、不安に駆られた人々は、分かりやすい「犯人」を求めたがるものだ。非合理的極まりないが、これも人間の性質か。
私はリリアから更に詳細な情報を聞き出した。発症時期、具体的な症状の推移、発症前の食事内容(記憶の範囲で)、行動記録。データを整理し、可能性を絞り込んでいく。
食中毒の線が濃厚か? しかし、共通する特定の食材が見当たらない。集団食中毒にしては、発生が散発的すぎる。
感染症? 症状からは特定のウイルスや細菌を断定できない。潜伏期間もバラバラに見える。人から人への感染拡大の様子も、今のところは明確ではない。
水質汚染? 村の主な水源は井戸と近くの小川だ。もし汚染されているなら、もっと広範囲に、かつ急速に被害が広がるはずだが……。
「情報が足りない。やはり、現場調査が必要だな」
私は結論付けた。机上の空論だけでは限界がある。実際に患者(?)を観察し、環境を調査する必要がある。




