第2章8節:ジェイド、絡んでくる
薪を集め、小屋に戻る途中、村の広場で数人の若者が集まっているのが見えた。その中心には、赤毛で見覚えのある青年――以前リリアとカイと一緒にいた、狩人風の若者がいた。確か……ジェイド、とかいう名前だったか。
私が通りがかると、ジェイドはこちらに気づき、明らかに挑むような目つきで近づいてきた。他の若者たちも、面白そうなものを見る目でこちらに注目している。面倒な状況になりそうだ。
「よう、エルフ。昨日リリアたちといた奴だな? ハルカ、とか言ったか」
ジェイドは馴れ馴れしく話しかけてくる。口調には敵意と、妙な対抗心のようなものが滲んでいる。
「そうだが。何か用かね?」
私は足を止めずに、素っ気なく返す。関わり合いたくないというのが本音だ。
「へっ、なんだその態度は。よそ者のくせに偉そうだな。リリアが世話焼いてるみたいだが、あんた、一体何者なんだ? 森でフラフラして、変な草ばっか集めてるって聞いたぞ」
どうやら私の行動は、すでに村の若者たちの間でも噂になっているらしい。
「私は研究者だ。植物の調査をしている」
「研究者ぁ? なんだそりゃ。食いもんにもならねぇことしてんじゃねぇよ。そんなことより、狩りの一つでも手伝ったらどうだ? エルフなんだろ? 目が良いって聞いたぜ」
ジェイドは得意げに胸を張る。自分の土俵(狩り)に引き込もうという魂胆か。あるいは、単に私を試したいだけか。いずれにせよ、付き合う義理はない。
「狩りには興味ない。それに、私の調査は食料確保にも繋がる可能性がある。例えば、毒草を見分ければ食中毒を防げるし、有用な薬草が見つかれば……」
「うるせぇ! ごちゃごちゃ理屈並べやがって! 要するに、お前は役立たずだってことだろ!」
ジェイドは私の説明を遮り、一方的に決めつけた。感情的な反応だ。議論するだけ無駄だろう。
「そう思うなら、それでも構わない。私は忙しいので失礼する」
私はジェイドを無視して歩き出そうとした。焦れたジェイドが何か言い返そうとしたが、その時、彼の仲間の一人が慌てたように声を上げた。
「お、おい、ジェイド! ボルガンさんがこっち見てるぞ!」
その言葉に、ジェイドはびくりと動きを止め、気まずそうな顔で視線を逸らした。どうやら、ボルガンの存在は若者たちにとって一定の抑止力になっているらしい。
私は構わず小屋へと足を向けた。面倒な輩に絡まれたが、実害はなかった。今後もああいった非合理的な接触はあるのだろうな、と少しだけ憂鬱な気分になった。




