第2章4節: アッシュウッドの植生調査
腹ごしらえ(パン粥は予想通り味は微妙だったが、栄養補給にはなった)を済ませ、私は本格的な植生調査のために再び森へ入った。リリアが教えてくれた情報を元に、比較的安全なエリアから探索を開始する。
エルフの鋭敏な五感は、植物の同定において非常に役立った。葉脈のパターン、樹皮の質感、微かな香り、土壌との関係性。前世の植物学の知識と照合しながら、未知の植物を次々と発見していく。
これは……アカネ科に近い特徴を持つが、花の色が異なる。薬効成分を含む可能性があるな。サンプルを採取。
こちらの蔓植物は、サポニンを含有していそうだ。魚毒として利用できるかもしれんが、食用は不可だろう。記録しておく。
足元には、鮮やかな赤い実をつけた低木。見た目は美味しそうだが、警告色である可能性が高い。鳥が食べた形跡もない。毒性の可能性大。これも記録。
リリアが「食べるとお腹がぽかぽかする」と言っていた実はこれか。カプサイシンに似た発熱成分を含むのかもしれない。少量採取して分析してみよう。香辛料として使える可能性がある。
薬草として使えそうなもの、染料になりそうなもの、繊維が取れそうなもの。森はまさに天然の資源庫だ。私は採取したサンプルを、持参した布袋に種類別に分けて入れていく。毒性を持つ可能性のあるものは、特に慎重に扱う。
調査を進めるうちに、リリアが「近づかない方がいい」と言っていたエリアに差し掛かった。瘴気のようなものが漂っているわけではないが、どことなく空気が重く、生えている植物も奇妙な形状のものが多い。魔法的な影響があるのかもしれない。これも興味深い調査対象だが、今は深入りすべきではないだろう。リスク管理も重要だ。
数時間の調査で、多くのサンプルとデータを収集することができた。これを持ち帰り、分析するのが次のステップだ。




