第13章10節: ラーメンの先の探求
アッシュウッド村に、ささやかなラーメンブームが到来した。村人たちは、リリア親子から教わった基本的な作り方を元に、それぞれが独自の工夫を凝らし始めている。森で採れる山菜をトッピングにしたり、干し肉から取った出汁をスープに加えたり。その創造性は、時に私の想像を超えるものもあった。
私は、そんな村の様子を微笑ましく(そして、時々アドバイスを求められて面倒に思いながらも)見守りつつ、自身の研究へと戻っていた。
味噌ラーメンの成功は、私に大きな満足感を与えてくれた。
だがそれは、ゴールではない。むしろ、新たなスタートだ。
発酵という深遠な世界の入り口に立ったに過ぎない。味噌も醤油も、まだまだ改良の余地がある。麹菌だけでなく、酵母菌や乳酸菌といった他の有用な微生物も、この世界には存在するはずだ。それらを見つけ出し、培養し、パンやヨーグルト、チーズ、そしてさらなる発酵調味料へと応用していく……。
考えるだけで、研究テーマは尽きない。
麺料理も同様だ。
ラーメンだけでなく、うどん、蕎麦、パスタ……。
様々な種類の麺と、それに合うスープやソース。可能性は無限に広がっている。
「食」の探求は、すなわち「文化」の探求であり、「科学」の探求であり、そして「生命」の探求でもある。この異世界で、私はその奥深さと面白さを、改めて実感していた。
やれやれ、静かな研究生活は相変わらず遠いようだが、この騒がしくも刺激的な日常もまた、悪くないのかもしれないな、と私は思うのだった。
次は何を作ろうか。そんなことを考えながら、私は新たな食材のリストアップを始めるのだった。




