第13章8節: 実食、そして理解へ
「……よし、分かった」
言葉での説明では埒が明かないと悟った私は、実力行使に出ることにした。つまり、リリアにもこの味噌ラーメンを食べさせてみるのだ。百聞は一食に如かず、だ。
私は手早くもう一杯分のラーメンを用意し、リリアの前に置いた。
「いいから、まずは食べてみろ。話はそれからだ」
リリアは、目の前に置かれた未知の料理――麺がスープに浸かり、様々な具材が乗った、いかにも濃厚そうな一杯――を、戸惑いの表情で見つめている。そして、私の顔とラーメンを交互に見比べ、おそるおそる箸(これも私が使い方を教えた)を手に取った。
まずは、スープを一口。
「……!」
リリアの目が、驚きに見開かれた。
そして、次の瞬間、その表情がぱあっと明るくなる。
「お、美味しい……! 何これ!? こんな味、初めて……!」
次に、麺。私が「こうやって食べるんだ」と手本を見せながら、軽く啜るように促す。リリアはぎこちないながらも、麺を口へと運んだ。最初は遠慮がちに、音を立てないように。だが、麺の弾力とスープの絡み具合に、すぐに夢中になったようだ。
そして、何度か食べるうちに、リリアは無意識のうちに、ズルッ、ズルズルッ、と軽快な音を立てて麺を啜り始めていた。
「……!」
その自分の立てた音に、リリア自身がハッとしたように動きを止めた。
そして、顔を真っ赤にして私を見る。
「あ、あわわ……ご、ごめんなさい、ハルカさん! つい、お行儀悪く……!」
私は静かに首を横に振った。
「いや、それでいい。どうだ? 啜って食べた方が、美味しく感じなかったか?」
リリアは、自分の口元に付いたスープを拭いながら、少し考えて、そして力強く頷いた。
「……うん! 本当だ! こうやって、ズズズーって食べた方が、なんだか麺もスープも、もっと美味しく感じる気がする!」
その顔には、先ほどの戸惑いは消え、新たな発見をした子供のような、純粋な喜びが輝いていた。
どうやら、ラーメンの美味さは、文化の壁をも超える力があるらしい。




