第12章6節: 採取と一次分析(カイと共に)
カイを一人で村に帰すわけにもいかず、かといって調査を完全に中止するのも惜しい。私は妥協案として、この周辺で予定していた採取と一次分析を、カイを傍らに置いたまま行うことにした。もちろん、安全には最大限配慮する。
「いいか、カイ。私のそばから絶対に離れるな。そして、私が許可したもの以外、勝手に触ったり口にしたりするな。分かったな?」
「うん、分かった!」
カイは元気よく返事をしたが、どこまで理解しているかは怪しい。
私は彼に注意を払いながら、先ほど見つけたオレンジ色のキノコと粘液植物の追加サンプルを採取した。
キノコについては、胞子の色や形状も記録しておく。味や香りの成分を特定するには、抽出・分離実験が必要だが、それは小屋に戻ってからだ。
粘液植物の粘液は、少量採取して性質を調べる。水溶性は低いようだ。熱を加えるとどうなるか? 簡単な耐熱テストも試してみる。燃えにくい性質があるようだ。これは何かに応用できるかもしれん。
カイは、私の作業を興味深そうに、しかし少し退屈そうに眺めている。彼にとっては、地味な作業にしか見えないだろう。
「ハル姉ちゃん、それ、何してるの?」
「これはな、カイ。この森にあるものが、私たちの生活に役立つかどうかを調べているのだ。食べられるもの、薬になるもの、道具の材料になるもの……世界は、まだ私たちが知らないもので満ちている。それを知ることが、私の研究なのだよ」
子供にも分かるように説明すると、カイは「ふーん」と頷いたが、やはりピンときていない様子だ。まあ、仕方ないか。
ひとまず、このエリアでの初期調査は完了した。カイを連れて安全に村へ戻ることを最優先に考えよう。




