第12章5節: 迷子のカイ、再び?
粘液植物のサンプルを慎重に採取していると、ふと、後方からガサガサと茂みをかき分ける音が聞こえた。私は咄嗟に身構え、音のする方へ視線を向ける。魔物か?
茂みからひょっこりと顔を出したのは、意外な人物だった。
「ハル姉ちゃん!」
息を切らせて現れたのは、なんとカイだった。なぜこんな森の奥深くに? まさか、私を追ってきたのか?
「カイ! どうしてここにいる!? 危ないだろう!」
私は思わず声を荒らげた。彼の無謀な行動に、驚きと、そして若干の怒りが込み上げる。
カイは私の剣幕に少し怯んだようだが、すぐに涙目で訴えかけてきた。
「だって、ハル姉ちゃん、一人で行っちゃうから……心配で……。リリア姉ちゃんには内緒で、こっそり後をつけてきたんだ……。でも、途中で見失っちゃって……迷子になっちゃった……」
……また迷子か。進歩がない。
私は深いため息をついた。
心配してくれる気持ちは分かるが、これはあまりにも危険すぎる。
だが、今、彼を叱りつけても仕方ない。
「はぁ……仕方ない。怪我はないか? 疲れているだろう。少し休め」
私はカイを近くの安全な場所へ座らせ、水筒の水を飲ませた。彼の無事を確認し、まずは安堵する。しかし、この状況をどうするか。調査は中断せざるを得ないだろう。彼を連れて村へ戻るべきか。だが、来た道を引き返すのも、また時間がかかる。
「全く、君は……本当に手のかかる子だな」
私は呆れながらも、カイの頭をくしゃりと撫でた。この小さな訪問者の存在は、私の計画を大きく狂わせたが、同時に、予期せぬ形で私の日常に変化をもたらす存在でもあるのだな、と改めて思った。




