第11章7節: 納豆普及戦略(関西風)
「よし」
私は決意した。
この村に、納豆の真の素晴らしさを理解させる。そのためには、まず彼らの先入観――特に「臭い」というイメージ――を払拭する必要があるだろう。
これは、前世で納豆メーカーが、納豆文化の薄い関西地方に納豆を普及させるために取った戦略とまったく同じだ。匂いを抑え、かつ、食べやすい調理法を提案する。古典的だが、有効な手段のはずだ。
まずは、匂いの少ない納豆の開発からだ。発酵時間や温度、使用する種菌の量などを調整し、試行錯誤を繰り返す。数日後、私は比較的マイルドな香りで、粘りも程よい納豆を作り上げることに成功した。
次に、この納豆を使った料理の開発だ。そのままご飯にかけるのは、まだハードルが高いだろう。そこで、他の食材と組み合わせ、納豆の風味を活かしつつも、前面に出しすぎない料理を考案した。
一つは、「納豆オムレツ」。
細かく刻んだ納豆と、同じく細かく刻んだネギ(森で採れる香味野菜で代用)、そして醤油もどきを少量混ぜ、溶き卵と合わせて焼き上げる。卵のまろやかさが納豆の風味を包み込み、ネギの香りがアクセントになるはずだ。
もう一つは、「納豆の包み揚げ」。
これも刻んだ納豆と野菜を、薄いパン生地(イースト菌もどきを発見・培養し、発酵させたもの)で包み、油で揚げる。
サクサクとした衣の食感と、中から現れる納豆の旨味が楽しめる一品だ。油は、植物の種子から魔法で圧搾・精製したものを使用する。
準備は整った。
私はこれらの「納豆料理」を携え、まずは誤解の発信源であるリリアの家へと向かった。




