第11章3節: 伝統製法への挑戦
「よし、作るぞ! 本格的な納豆を!」
納豆菌の存在がほぼ確定した以上、やるべきことは一つだ。前世の記憶を頼りに、私は伝統的な納豆作りに挑戦することにした。
まずは、大豆をよく洗い、一晩水に浸しておく。翌日、十分に水を吸った大豆を、大きな土鍋で柔らかくなるまでじっくりと煮る。この煮加減が重要だ。柔らかすぎても、硬すぎてもいけない。
煮上がった大豆の湯をよく切り、熱いうちに例の「納豆菌が付着した豆」から採取したネバネバ(種菌代わりだ)を少量混ぜ込む。
そして、ここからが伝統製法の見せ所だ。
稲藁だ。
藁に付着している天然の納豆菌を利用するのが本来の製法だが、今回は既に種菌があるので、藁は納豆の発酵に適した環境を作るための「器」としての役割が主となる。
私は村で手に入れた乾燥した稲藁を煮沸消毒し、その中に熱い大豆を包み込んでいく。藁苞というやつだ。これを、魔法で温度と湿度を一定に保った保温箱(これも自作)に入れ、約一日間発酵させる。
発酵中は、気が気ではなかった。
温度は適切か? 湿度は? 雑菌が繁殖していないか?
私は何度も保温箱の様子を(極力開けずに)確認し、調整を繰り返した。
それはまるで、重要な化学実験の最終段階を見守るような心境だった。




