第11章2節: 検証開始:これは本当に納豆菌か?
高鳴る心を抑え、私は冷静に検証を開始した。これが本当に納豆菌によるものなのか、あるいは単なる腐敗なのかを見極める必要がある。
まず、糸を引いている豆を少量採取し、顕微鏡(これも自作の簡易的なものだが、微生物の観察程度は可能だ)で観察する。
……桿菌だ。
そして、胞子を形成している様子も確認できる。
これは納豆菌(Bacillus subtilis natto)の特徴と酷似している。
次に、培養実験だ。
煮沸消毒した他の大豆に、この糸引き豆の表面のネバネバを少量付着させ、適度な温度と湿度(魔法で調整)を保った容器に入れて数日間放置する。もしこれが納豆菌ならば、同様の発酵が進むはずだ。
数日後。容器の中の大豆は、見事に白い膜に覆われ、あの独特の香りを放ち、そして……粘り気のある糸を引いていた。
「間違いない……! これは、ほぼ納豆菌で確定だ!」
私は歓喜の声を上げた。
もちろん、遺伝子レベルでの同定ができない以上、100%とは言い切れない。
だが、形態学的特徴、培養結果、そして何よりこの「納豆らしきもの」の香り。
総合的に判断して、これは納豆菌、あるいはそれに極めて近縁な微生物による発酵現象と見て間違いないだろう。
異世界で納豆が食べられる!
その事実に、私の研究者としての探求心とは別の、もっと個人的で、そして強烈な欲求が激しく突き動かされるのを感じた。




