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りんご一個分の収納。マジでどう使えと!? 〜辺境騎士爵に転生したので、なんとか無難な人生を…歩みたいなぁ〜  作者: 大童好嬉


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第675話 新たな出会い02

和やかな空気が流れていたその時だった。


「おう、親友!」聞き慣れた声が食堂に響く。


ヴェゼルが振り向くと、そこには見覚えのある少年が立っていた。フルフェンス・パロ・ドマーニ。


テルスター・フォン・ドマーニ子爵の嫡男であり、ローグ子爵夫人アルトの甥。そして何より、ヴェゼルのことを勝手に親友と呼ぶ数少ない人物だった。


というより、気軽に親友を名乗る人間はこの世に彼しかいない。


フルフェンスの父であるテルスター・フォン・ドマーニ子爵は、ビック家と同じくかつてはヴァンガード辺境伯派に属していた貴族の一人だった。


しかし、ビック家とヴァンガード辺境伯家と対立した際、その立場を大きく変えることになる。


結果として、テルスターはフリードとローグ子爵に同調し、ヴァンガード辺境伯派から離脱した。


それは決して軽い決断ではなかった。帝国貴族社会において派閥を抜けるという行為は、時として敵を作ることを意味するからだ。


だがテルスターは、自らの信じる道を選んだ。


そして現在。ビック家、ローグ家、ドマーニ家に加え、アビーの父であり近年伯爵へと陞爵したバーグマン・フォン・ヴェクスター伯爵家もその輪に加わっている。


彼らは公式に派閥を名乗っているわけではない。


しかし帝都の貴族たちから見れば、それはもはや一つの勢力だった。


ビック家を中心に、ローグ家、ドマーニ家、ヴェクスター家が連携するその関係は、実質的な派閥と認識されているのである。


「失礼するよ」


そう言ってフルフェンスは空いている席へ腰を下ろす。


そして初対面の二人へ向き直った。


「僕はヴェゼルの唯一の”親友”フルフェンス・パロ・ドマーニだ。よろしく」


わざわざ唯一の親友を強調する。


ヴェゼルは苦笑した。否定しても面倒なことになるので何も言わない。


「相変わらずですね」


プロフィアも少しだけ呆れたように笑う。


「いやいや、事実だからね」


フルフェンスは全く気にしていない。


そのまま自然な動作でプロフィアへ視線を向けた。


「それにしても、プロフィア嬢は相変わらずお綺麗ですね」


「ありがとうございます」


プロフィアは慣れた様子で微笑み返す。


その後もフルフェンスは物怖じすることなくダイナやトレディアとも挨拶を交わし、あっという間にその場へ馴染んでしまった。


そして一通り落ち着いたところで、にやりと笑う。


「しかしヴェゼル、お前のせいで試験が一日遅れたんだぞ。相変わらずだな。またやらかしたな?」


ヴェゼルの表情が微妙に曇る。


するとダイナも興味を示した。猫耳をぴくりと動かしながら身を乗り出す。


「私も噂は聞いたぞ。第三騎士団長を討ち取り、数十人もの兵を一瞬で戦闘不能にしたとか」


「討ち取ってはいないよ」


「だが勝ったのだろう?」


「それはまあ……」


「ますます興味深いな!」


ダイナは嬉しそうに拳を握る。


「やはり一度お手合わせ願いたい!」


「その話、まだ続いてたんだね」


ヴェゼルは苦笑した。


フルフェンスは呆れたように肩を竦める。


「プロフィア嬢にも本気で槍を向けたと聞いたよ。僕は本当に腹が立ったぞ」


「私も驚きましたが、まあ終わったことですので」


プロフィアは落ち着いて答える。


そのやり取りを聞いていたトレディアが、おずおずと口を開いた。


「やはり……ヴェゼルさんとバルカン帝国上層部は、あまり上手くいっていないのですか?」


素朴な疑問だった。


ヴェゼルは少し考えて肩を竦めから答える。


「どうなんだろうね。俺も父さんも、特に何か思っているわけじゃないんだ。ただ……相手がどう思っているかは分からないかな」


その瞬間だった。


ダイナが実に単純明快な結論を出した。


「ならば我が国へ来ればいい!」


全員の視線が集まる。


ダイナは気にした様子もなく続けた。


「飛地にはなるだろうが問題ない。我がグロム獣王国で迎えよう! 幸い、私は第一王女だからな!」


さらりと爆弾を投げた。


「私を娶れば全て解決だ!」


食卓が静まり返る。


ヴェゼルは固まり。トレディアは目を丸くし。フルフェンスは吹き出しかけ。


妖精たちはよく分かっていない。


「おかわりー!」「パンください!」「おにくー!」平常運転だった。


ただし、同じく食事をしていたサクラが声を上げようとしたのをヴェゼルが制した。これ以上何かを言えば面倒になると思ったのだろう。


最初に我に返ったのはプロフィアだった。


「失礼しました。ダイナ様はグロム獣王国の王族でいらしたのですね」


慌てて姿勢を正す。だがダイナは豪快に笑ってひらひらと手を振る。


「いやいや、かしこまらないでくれ。”様”も不要だよ。たまたま王族に生まれただけだからね」


そしてどこか誇らしげに続けた。


「現に私は四組にすら入れなかった」


「……はい?」


ヴェゼルが思わず聞き返す。


「私もトレディアも五組だからね!」


胸を張る内容ではない。


トレディアが恥ずかしそうに補足する。


「ダイナさんは……勉強が全くできなくて……」


「うむ!」


「私は逆に、運動も魔法も剣も全然駄目なので……」


今度はダイナが補足した。


「だから二人揃って五組なのだ!」


実に見事な凸凹コンビだった。


しかし本人たちはあまり気にしていないらしい。


特にダイナは堂々と言い放つ。


「勉強などどうでも良いじゃないか!強ければ全てが解決する!」


拳を握り締める。


「しません」


「力こそ全てだ!」


「しません」


トレディアが即座に否定した。


ダイナは数秒考えた後、真顔で首を傾げた。


「……そうなのか?」


ヴェゼルは思わず笑いそうになる。


極端だ。片方は頭脳特化。もう片方は戦闘特化。


なるほど確かに気が合うのかもしれない。


そんな二人へ向けて、プロフィアが柔らかく微笑んだ。


「実は私とヴェゼルさんも五組なのです」


「本当か!」


ダイナの目が輝く。


トレディアも驚いていた。


「よろしくお願いしますね」


プロフィアは続ける。


「入学初日から知り合いができて、とても嬉しいです」


ダイナもトレディアも嬉しそうに頷いた。


フルフェンスも笑う。


「僕は二組だけど、どうやら今年の五組は面白くなりそうだね」


その言葉に誰も反論しなかった。


朝の食堂は相変わらず賑やかだった。


だがヴェゼルには分かる。


昨日まで知らなかった者たちが、こうして同じ卓を囲んで笑っている。


王女。大食いの少女。自称親友。妖精たち。そしてプロフィア。


騒がしくなりそうな予感しかしない。


けれど、不思議と嫌な気はしなかった。


むしろ――。


この学園生活は、思っていた以上に楽しいものになるのかもしれない。


そんな予感が、ヴェゼルの胸に芽生え始めていた。

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