第六十九刻 武装と魔法 優しさ
「もう魔族の皆もなぜ人間の領地を攻めているかなんて分かってない。彼らの王が命令してるから従ってるだけ。」
彼女は、悲しそうに呟く。
「こんなもの見せて俺にどうしてほしいんだよ!」
俺は勇者でも無ければ英雄でもない、今はただの一般兵。
「君は魔族と戦うんでしょ?
でも、彼のようにはならないで。」
「彼……?」
「君のお友達、力に飲まれ始めてる。
意味や理由を考えず、戦いをただの遊びのように…」
エヴァン。
勇者の称号を与えられたアイツが力に……
(俺が感じた違和感はそういう事なのか?)
「手を取り合うのは難しいかもしれない、不可能かも…
でも、君のように悩んでる魔族もいる。
もし同じ方向を見ている誰かと出会えたらその時は…」
また、彼女の声が遠くなる。
ここでお別れのようだ。
「また、会えるといいわね。」
…
……
………
茶色の木目が見える、微かに消毒液の匂いがする。
「あ、起きた!大丈夫?」
聞き慣れた声。
声の方へ顔を向けるとレインがこちらを見ている。
「レインがここまで運んでくれたのか?」
「そうだよ!セス君廊下で倒れてるんだもん、びっくりしちゃったよ〜。」
「すまない、世話かけたな。」
偶然とはいえ、知ってる人で良かった。
今の俺の姿はとても見せられたものではない。
「全然いいよ、すこし驚いちゃったけど………
それよりセス君、髭似合わないね。」
彼女はクスクスと笑う、俺もつられて笑っていた。
「なぁレイン、人間と仲良くしたい魔族っていると思うか?」
ふと口から出た、まずいと思った。
こんな事聞いたらレインだって俺が変になったと感じるはずだ。
「うーん。分からない!居ないかも。」
「そ、そうだよな変なこと聞いてすまん。」
彼女の答えは真っ当なものだ。
「でも居て欲しいとは思うな。」
「そうか。分かった。」
ほんの少しの一歩、それでも悩んで自分の意志を持ってる人がいる。
そのことが嬉しい。
「それでさレイン…手離してくれないか?」
暖かくて優しい温もり、寝ている間もずっと彼女は握ってくれていたのだろう。
「へっ?……あぁごめんなさい!」
彼女は慌てて手を離し下を向いた。
恥ずかしそうに落ち着かないレインがとても可愛く見えた。
「ありがとう、もう大丈夫。」
身体を起こし、立ち上がる。
少しふらついたが問題ない。
「本当に大丈夫?部屋まで送ろうか?」
レインは俺の顔を覗き込みながら言った。
「大丈……、お願いしようかな。」
「うん!任せて!」
(この笑顔が見れるなら、たまには頼るのも悪くない…かな?)
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初投稿なので右も左も分かっておりません。
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