第五十五刻 勇者と共に 敵兵
「凄いなぁ…」
俺は感嘆の声を漏らしていた。
前線で起きる爆発、火柱、竜巻。
時折こちらに来るの爆風や塵だけ。
「あれはギースさんかな?あの竜巻はエルゼ先生だ!」
レインは俺の横で飛び跳ねながら舞台を見る子供のよう
にはしゃいでいる。
普段見る先輩達、優しい人、怖い人、サボってる人。
そんな先輩達の本気の姿。
それでも敵の数は多い、前線から溢れた黒鎧の兵士が一人馬に乗ってこちらに駆けてきた。
「レイン!アイスバインドで馬を!」
レインに指示を送る、コクリと頷き彼女から放たれる氷弾。
馬の足元に着弾したそれは瞬く間に地面を凍らせ馬の足を捉えるかのように凍らせた。
バランスを崩し馬と共に兵士が地面に叩きつけられる。
氷弾と共に走り出していた俺は兵士が立ち上がる前に攻撃の届く距離まで接近していた。
「無名五式〈突〉」
鎧の上から腹を殴りつける。
吹き飛ぶ敵兵、アンドレの時とは違い遮蔽物の無い一撃は粗悪な鎧に穴を開けるに十分な威力だった。
「✕※△$$$$$$!」
武器を離し腹部を抑えて叫ぶ敵兵、腹に空いた大穴からは青い血が吹き出している。
兜の留め具を外し苦悶の表情を浮かべる魔族の兵士。
俺と目が合った。
痛み、恐怖、絶望、目がそう言っている。
言葉は違う、血の色も見た目も、それでもわかってしまう。
「やめてくれ、殺さないでくれ。」
腰にかけた剣を握る手が緩む。
「セス!惑わされるな!」
背後から物凄い勢いで現れた人影、放たれた斬撃は敵兵の首を跳ね飛ばした。
バタッと音を立てて地面に倒れ込む首のない身体、転がった頭が回り再度俺と目が合う。
腹から喉を伝わり口に広がる酸っぱい香り。
口から溢れ出そうになるそれを必死に我慢し、首を跳ねた主を見る。
青い血を剣から滴らせ佇むエヴァン。
「魔族だぞ、情をかけるな。自分が死ぬぞ。」
エヴァンはそれだけ言い残し前線へと走り出した。
悔しいがエヴァンの言う通りだ、油断させて不意打ちするつもりだったら?味方に狙わせていたら?
「立場はいつでも逆になる…」
エヴァンは躊躇なくやった、俺は出来なかった。
差をまざまざと見せつけられ奥歯を嚙みしめる、敵兵の死体を目に焼き付けるようにその場でしばらく動けずにいた。
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