第9話:炭酸飲料
部活終わりの夕方。蓮は校門近くの自動販売機で、冷たいコーラを買った。
プシュッ、と小気味いい音を立てて缶を開け、ゴクゴクと喉を鳴らして飲む。
「ぷはぁー! 生き返るわー!」
「あ、宮本くん。ずるい、自分だけ冷たいの飲んでる」
振り返ると、部活帰りの真白さんが歩いてくるところだった。彼女の額には、うっすらと汗がにじんでいる。
「真白さん。部活終わり? 喉乾いてるなら、自販機で何か買えばいいじゃん」
「小銭入れ、部室に置いてきちゃったんだよね。ねえ、それ、一口ちょうだい?」
真白さんは蓮の持っているコーラの缶を指差した。
「えっ!? こ、これ? でも、俺もう口つけちゃったし……間接キスに……」
「何言ってるの? 缶ジュースだよ? 気にする方が意識してるみたいで変じゃない?」
真白さんはケロッとした顔で言った。
(くっ……そう言われると、拒否する方が意識してるみたいでカッコ悪いな……)
「わ、分かったよ。ほら、少しだけな」
蓮は照れ隠しにぶっきらぼうに缶を差し出した。
真白さんは「ありがとう!」と嬉しそうにそれを受け取ると、両手で缶を持って、口元に運んだ。
ゴク、ゴク、と小さく喉が鳴る。
蓮はそれを見つめながら、頭の中で(本当に間接キスじゃん……!)と大パニックを起こしていた。
「ぷはっ、おいしい! でも、やっぱり炭酸きついなー」
真白さんは少し舌を出して、辛そうに顔をしかめた。その仕草が妙に色っぽくて、蓮は心臓が跳ね上がる。
「はい、お返し。ごちそうさま、宮本くん」
戻ってきた缶を、蓮は受け取った。
(どうしよう……これ、もう一回口つけて飲んでいいのか? それとも、持って帰るべきか?)
蓮が缶を持ったままフリーズしていると、真白さんは蓮の顔をじっと見つめ、耳元に顔を近づけて、小さく囁いた。
「ねえ、宮本くん。私が口つけたところ、探してるでしょ?」
「な、ななな、何考えてんだよ! 探してないわ!」
「ふふ、真っ赤。嘘つき。……私、宮本くんとなら、本当のキスでもいいよ?」
「~~~~っっ!!!!」
真白さんはそれだけ言うと、軽やかな足取りで「バイバイ!」と手を振って校門を出て行ってしまった。
蓮は残されたコーラを見つめながら、あまりの衝撃に、その場から一歩も動けなくなるのだった。
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