第10話:占い雑誌
休み時間、真白さんは机の上に一冊のティーン向け雑誌を広げていた。
「宮本くん、ちょっとこれ見て」
「ん? 雑誌? 何のページだよ」
「今月の『星座×血液型・恋愛相性占い』。宮本くんは牡羊座のO型でしょ?」
「何で俺の星座と血液型知ってんだよ……」
「前に聞いたじゃん。ちなみに私は、魚座のA型」
真白さんは誌面の表を指でなぞっていく。
「ええと……牡羊座O型の男子と、魚座A型の女子の相性は……あ、あった。なんと、20パーセントだって。最悪だね」
「20パーセント!? ひっく!」
蓮は思わず声をあげた。なぜか分からないが、真白さんとの相性が悪いと言われて、胸の奥がチクリと痛んだ。
「なんだよ、占いなんて当たらないって。ただの気休めだろ」
「あ、宮本くん、いまガッカリしたでしょ?」
「してない! 20パーセントだろうが0パーセントだろうが、俺には関係ないし!」
蓮はそっぽを向いた。真白さんはそんな蓮の反応を見て、クスクスと嬉しそうに笑っている。
「本当に分かりやすいなあ。でもね、宮本くん。この占いの解説、なんて書いてあると思う?」
「さあね。どうせ『価値観が合わない』とかだろ」
「ううん、違うよ」
真白さんは雑誌を蓮の方に向けて、ある一行を指差した。
『相性20パーセント:基本の相性は最悪。だけど、お互いが「相手をからかうこと」で、距離が急接近する特別な関係。主導権を握る女子のからかいに、男子が素直に応じれば、相性は100パーセントに化ける可能性大!』
「なっ……!?」
蓮は目を丸くした。そんな都合のいい解説があるわけがない。
「嘘だろ! そんなこと書いて……」
よく見ると、真白さんが指で隠している部分の裏に、彼女がノートの切れ端にシャーペンで書いた手製の「偽解説」が貼り付けられていた。
「あ! お前、これ自分で書いたろ!」
「あはは、バレちゃった?」
真白さんはペロッと舌を出して、偽の紙を剥がした。本当の解説には『お互いに歩み寄りが必要』とだけ書かれていた。
「もう、手が込んでるなあ、真白さんは……」
呆れる蓮に、真白さんは雑誌を閉じ、まっすぐな目で蓮を見つめた。
「でもね、宮本くん。占いがどうであれ、私は宮本くんをからかうのが一番楽しいよ。……宮本くんは、私にからかわれるの、嫌?」
真白さんの真剣なトーンに、蓮は言葉に詰まった。
嫌か、と聞かれれば、悔しいけれど、決して嫌ではないのだ。むしろ、彼女と話している時間は、学校生活で一番楽しい時間だった。
「……嫌じゃ、ないけど……。でも、たまには俺にも勝たせろよ」
蓮が小さく呟くと、真白さんは本当に嬉しそうに、満面の笑みを浮かべた。
「ふふ、じゃあいつか勝たせてあげる。私が本当に宮本くんに負けちゃったときね」
その「負ける」が何を意味しているのか、当時の蓮にはまだ、知る由もなかった。
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