第11話:日焼け
7月に入り、日差しが本格的に強くなってきた。
体育の授業がプールに切り替わったこともあり、男子クラスメイトたちは「誰が一番黒くなったか」で競い合っていた。
「宮本くん、ちょっと見せて」
休み時間、蓮が席に戻ると、真白さんが机の上のノートから顔を上げた。
「ん? 何を?」
「腕。宮本くん、結構日焼けしたね」
真白さんは自分の腕を蓮の腕のとなりに並べた。
真白さんの肌は、夏の太陽の下でも透き通るように白い。それに比べて、蓮の腕は健康的な小麦色に変わっていた。
「あ、本当だ。体育のプールで結構焼けちゃったからな。真白さんは全然焼けないね」
「私はちゃんと日焼け止め塗ってるからね。ほら、比べてみると全然違う」
真白さんは並べた腕を、さらに蓮の腕へと近づけた。
触れ合うか触れ合わないかの距離で、彼女の白い肌が蓮の視界に飛び込んでくる。
「宮本くんの腕、男の子って感じがするね。ちょっと強そう」
「そ、そうか? まあ、これでも一応男子だしな……」
褒められて、蓮は少し鼻が高くなる。
「じゃあさ、日焼けの境目、見せて?」
「えっ!? 境目って……」
「袖のところ。どれくらい焼けたのか気になる」
真白さんは蓮の体操服の袖口に手をかけ、少しだけ上に捲り上げようとした。
真白さんの指先が蓮の二の腕に直接触れる。その冷たさに、蓮の背筋にゾクッと電気が走った。
「わ、わっ、ちょっと待てって! 恥ずかしいから!」
「何が恥ずかしいの? 腕だけでしょ?」
「腕だけだけど……なんか緊張するだろ!」
「へえ、私に触られると緊張するんだ?」
真白さんは手を止め、捲り上げた袖を持ったまま、いたずらっぽく下から蓮の顔を覗き込んだ。
「違う! 誰に触られても、急だったらびっくりするって意味だよ!」
「ふーん……じゃあ、急じゃなければいいんだ」
真白さんはそう言うと、蓮の二の腕を指先で優しくトントンと叩いた。
「じゃあ、いくよ? トントン……はい、触りました」
「お前なぁ……っ!」
完全に真白さんのペースだ。蓮が顔を真っ赤にして腕を引っ込めると、真白さんは満足そうに自分の席へ戻り、日焼け止めのボトルを取り出した。
「宮本くんも日焼け止め塗る? 私が塗ってあげてもいいよ? 背中とか」
「塗るわけないだろ!」
蓮は捲れた袖を大急ぎで元に戻しながら、夏の暑さとは違う熱が、体中に充満していくのを感じていた。




