表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
週間ランキング49位、月間ランキング74位『となりの席の真白さん』  作者: S.S
中学生 いたずらやからかい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/1100

第12話:扇風機

クーラーの効きが悪い古い教室。

真夏の昼下がり、教室の天井で回る大きな扇風機だけが、生ぬるい風を送り出していた。

「あつーい……溶ける……」

蓮は机に突っ伏して、完全に伸びていた。授業間の短い休み時間、誰もが暑さで無口になっている。

パタパタパタ……。

不意に、心地よい涼しい風が蓮の首筋に当たった。

「……ん?」

顔を上げると、真白さんが自分の下敷きを使って、蓮に向かって風を送ってくれていた。

「あ、真白さん。……サンキュ、生き返るわ」

「どういたしまして。宮本くん、本当に暑さに弱いね。犬みたいにベロが出そうだよ」

「うるさいな。これでも耐えてる方だよ」

真白さんはしばらく蓮を仰いでくれていたが、やがて「あー、私も疲れちゃった」と下敷きを机に置いた。そして、蓮と同じように机に突っ伏した。

2人は机に顔を伏せたまま、お互いに向き合う形になった。

距離は30センチもない。真白さんの綺麗な瞳が、すぐ目の前で蓮を見つめている。

「ねえ、宮本くん」

「……何?」

「こうしてると、なんか2人だけの世界みたいだね」

図書室よりも静かな、暑さに気怠い教室。周りの生徒たちの話し声が、遠くのBGMのように聞こえる。

「……何言ってんだよ。みんな周りにいるじゃん」

「聞こえてないよ。みんな暑くて自分のことで精一杯だから」

真白さんは少し目を細めて、蓮の髪の毛に手を伸ばした。前髪のあたりを、指先で優しく整えるように触る。

「宮本くんの髪、意外とサラサラだね」

「あ、おい……触るなって……」

抵抗しようとしたが、暑さのせいか、それとも彼女の優しい手つきのせいか、体に力が入らない。

「ねえ、宮本くん。今、心臓バクバク言ってるでしょ?」

「言ってない……暑いだけだ……」

「嘘つき。私には聞こえるよ? 扇風機の音より大きいもん」

真白さんはクスッと笑うと、机の上で自分の手を少しだけ伸ばし、蓮の指先にツン、と触れた。

「もし、これが暑さのせいじゃないなら……どうする?」

真白さんの言葉が、蓮の耳の奥でじんわりと溶けていく。

キーンコーンカーンコーン。

授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響き、2人は弾かれたように体を起こした。

先生が教室に入ってくる中、蓮は自分の胸の鼓動が、本当に扇風機よりも大きな音を立てていることに、気づかない振りをすることで必死だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ