第13話:終業式
ひときわ長い校長先生の話が終わり、ようやく一学期の終業式が幕を閉じた。
明日からはいよいよ、待ちに待った30日間の夏休みが始まる。
教室に戻り、担任から通知表が配られる。
「終わったー! 夏休みだ!」
「宿題多すぎだろ!」
解放感に包まれる教室の中で、蓮も自分の通知表をカバンにしまいながら、小さくガッツポーズをしていた。
「宮本くん、通知表どうだった?」
真白さんが自分の通知表を持ったまま、蓮の席の横に立った。
「ん? まあ、いつも通り普通だよ。真白さんは? どうせオール5とかだろ」
「まさか。体育は4だったよ。……ねえ、ちょっと見せ合おうよ」
「え、嫌だよ。俺の成績なんて見せても面白くないし」
蓮がカバンを閉めようとすると、真白さんは素早い手つきで、蓮のカバンから通知表を抜き取った。
「あ! おい、泥棒!」
「どれどれ……あ、数学『4』に上がってる! すごいじゃん、宮本くん。中間テスト頑張ったもんね」
「うぐ……っ、勝手に見るなよ……」
恥ずかしそうに顔を伏せる蓮に、真白さんは自分の通知表を蓮の机の上にぽんと置いた。
「はい、お返し。私のあげる」
「いらないって……って、うわ、本当に他は全部『5』じゃん。やっぱり頭いいんだな」
ため息をつく蓮に、真白さんは机の端に腰掛けるようにして、少し寂しそうな表情を浮かべた。
「ねえ、宮本くん。夏休み、何するの?」
「え? 部活もあるし、友達と川に遊びに行ったり、ゲームしたりかな。真白さんは?」
「私は……特になし。家でのんびり勉強したり、本読んだりかな」
「そっか」と蓮が答えると、真白さんは蓮の顔をじっと見つめてきた。
「ねえ、宮本くん。夏休み中、私のこと、何回くらい思い出すと思う?」
「はあ!? なんでお前のこと思い出さなきゃいけないんだよ!」
「えー、冷たいなあ。私は毎日思い出す予定なのに」
真白さんはケロッと言ってのけた。
「……またそうやって、からかう」
「からかってないよ? 隣の席に宮本くんがいないの、寂しいもん」
真白さんはカバンを肩にかけると、教室の入り口に向かって歩き出した。そして、振り返って満面の笑みを見せる。
「宿題、分からなくなったら連絡してね。いつでもお泊まりで教えてあげるから。……じゃあ、良い夏休みを、宮本くん」
ひらひらと手を振って去っていく真白さんの後ろ姿を見送りながら、蓮は一学期が終わった喜びよりも、「明日から真白さんに会えない」という小さな寂しさが、胸の奥に芽生えていることに気づいてしまった。




