第14話:夏休みのプール
夏休み真っ只中。学校のプールが開放される日、蓮は男友達数人と一緒に学校へ向かった。
ギラギラと照りつける太陽の下、冷たいプールに飛び込む瞬間は最高だった。
「おい宮本、あっちに白石さんいねえ?」
友達に小突かれ、蓮がプールの反対側に目をやると、そこには紺色の学校指定の水着を着た真白さんが、プールサイドに座って足を水に浸していた。
(うわ、真白さんだ……)
学校の水着とはいえ、いつもと違う姿に蓮はドギマギしてしまう。友達の手前、意識していない振りをしながら、蓮はそっと真白さんの方へ泳いで近づいた。
「よ、真白さん。来てたんだ」
「あ、宮本くん。お水、気持ちよさそうだね」
真白さんは嬉しそうにパチャパチャと水面を蹴った。その水しぶきが蓮の顔にかかる。
「冷たっ! 何すんだよ。真白さんは泳がないの?」
「私、ちょっと水泳苦手なんだよね。だからここで、宮本くんが泳ぐの見てようと思って」
「見てるだけなんてつまらないだろ。ほら、入ってこいよ」
蓮が冗談半分で真白さんの足首を引っ張るジェスチャーをすると、真白さんは「あ」と小さく声をあげ、自らプールの中へとドボンと飛び込んできた。
ザバーン、と大きな水音がして、真白さんの顔が蓮のすぐ近くに現れる。
濡れた髪が顔に張り付き、いつもより少し大人っぽく見える。
「ちょっと、宮本くんが引っ張るから落ちちゃったじゃん」
「えっ、俺、触ってないぞ!?」
「嘘。心の声で引っ張ったでしょ?」
真白さんはぷっと頬を膨らませた。そして、水中で蓮の腕をぎゅっと掴んできた。
「わ、わっ、何だよ!」
「お仕置き。私、泳げないから、宮本くんが支えてて」
水の中とはいえ、密着度が衣服を着ている時とは段違いだった。真白さんの体の柔らかさが、腕を通じてダイレクトに伝わってくる。
「おい、友達が見てるから離れろって!」
「嫌だよ。離したら溺れちゃうもん」
真白さんは悪戯っぽく微笑みながら、さらに蓮の体に体を寄せてきた。
「ねえ、宮本くん。水の中って、外より心臓の音が響くんだって。……宮本くんの音、すっごくよく聞こえるよ?」
「それ、プールの水の音だろ!」
蓮は限界を迎え、真白さんを優しく押し戻すようにして、バシャバシャと勢いよく反対側へ泳いで逃げ出した。
後ろから聞こえる真白さんの楽しそうな笑い声は、夏の青空にどこまでも高く響いていた。




