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週間ランキング49位、月間ランキング74位『となりの席の真白さん』  作者: S.S
中学生 いたずらやからかい

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第61話:ホームの温度

改札を抜け、人気ひとけのまばらなホームへと上がると、冷たい寒風が容赦なく二人の頬を撫でた。

先ほどまでの全力の駆け足のせいで、蓮の喉の奥はひりひりと熱い。

真白は少し前を歩き、黄色い線の内側で足を止めると、ようやく振り返った。

マフラーに顔を埋めたまま、上目遣いで蓮をじっと見つめてくる。

「……宮本くん、やっぱり歩くの遅い」

「しょうがないだろ、真白さんが急に走り出すから……」

蓮は息を切らせながら並んだ。

お互いの白い息が、駅の蛍光灯に照らされて白く混ざり合う。

先ほど、雪の坂道で真白の体を強く抱きしめた時の、柔らかい感触と甘いシャンプーの香りが、まだ脳裏から離れない。意識すればするほど、顔が熱くなるのが分かった。

「ねえ、宮本くん」

「な、なに?」

身構える蓮を見て、真白の目がいたずらっぽく細められる。

「さっきさ、私を助けてくれたとき……」

「うん」

「ものすごーく、必死な顔してたよ? 少女漫画のヒーローみたいだった」

「なっ……!?」

不意打ちのからかいに、蓮の心臓が跳ねた。

「そ、それは……真白さんが今にも頭から転びそうだったからだろ! 誰だってあんな状況、必死になるって!」

「ふーん、誰にでもあんな風に飛びつくんだ?」

クスッと笑う真白。完全に彼女のペースだ。

「ちがう! 真白さんだから……あ、いや、そうじゃなくて!」

「じゃあ、どういうこと?」

一歩、真白が距離を詰めてくる。

普段なら言い返せるはずなのに、さっきのハプニングの後では、彼女の綺麗な瞳をまっすぐ見ることができない。蓮はたまらず視線を斜め下に逸らした。

「……とにかく、怪我がなくてよかったってことだよ」

「ふふ、ありがと。……でもね、宮本くん」

真白は一呼吸置くと、マフラーを少しだけ下にずらした。

現れたその頬は、からかっている割には、夕暮れの雪景色よりもずっと赤く染まっている。

「嘘つくとき、いつも左側を見るの、やめた方がいいよ?」

「え……」

「私の心臓の音、ぜったい聞こえてたでしょ?」

「う……」

図星だった。

防寒着越しでも、確かにドクドクと速く打っていた彼女の鼓動。

「……聞こえて、ないよ」

「じゃあ、なんで宮本くんの顔、そんなに赤いの?」

「それは……寒いからに決まってるだろ!」

蓮が必死に抗議すると、真白は満足そうに微笑んだ。そして、トコトコとさらに一歩近づき、蓮の耳元に口を寄せた。

「……じゃあ、お互い様、ね」

「え?」

「宮本くんの心臓の音も、すっごく速かったの、私に響いてたもん」

囁かれた言葉が、冷え切ったホームに優しく溶けていく。

真白はすぐに体を離すと、「あ、電車きた」と、遠くから近づいてくるヘッドライトの光を指差した。

ガタゴトと音を立てて滑り込んできた電車の風が、二人の髪を揺らす。

ドアが開き、真白が先に車内へと足を踏み入れた。

蓮は自分の胸に手を当て、未だに激しく刻まれる鼓動を感じていた。

(全部、お見通しってことか……。全然、敵わないな)

冬の寒さなんて完全に忘れてしまうほどの熱を胸に抱いたまま、蓮は彼女の待つ車内へと一歩を進めた。


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