第6話:衣替え
6月に入り、学校は衣替えの季節を迎えた。
昨日までの黒い学ランから一転して、教室は男子の白いカッターシャツと、女子のセーラー服の白さが眩しい。
「うわ、なんか急に夏って感じだな」
蓮が席に着くと、となりの真白さんも夏服に身を包んでいた。長袖から半袖になり、すらりと伸びた白い腕がやけに目に留まる。
「おはよう、宮本くん。じっと見て、どうしたの?」
「あ、いや! おはよう。別に見てないよ、衣替えだなーって思っただけ」
慌てて目をそらす蓮に、真白さんはふふっと微笑んだ。
「ふーん。ねえ、宮本くん。冬服と夏服、どっちの私が好き?」
「はあ!? なんだよその質問。どっちでもいいだろ!」
「えー、私は結構大事な質問なんだけどな。教えてよ」
真白さんは机に身を乗り出してくる。半袖になった分、彼女の仕草がいつもより大胆に見えて、蓮は目のやり場に困った。
「……強いて言うなら、冬服の方が落ち着いてていいんじゃないか?」
「へえ、どうして?」
「どうしてって、そりゃ……」
夏服だと、腕が見えたり、なんとなく全体的に薄着だからドキドキする――なんて口が裂けても言えない。
「……なんとなくだよ!」
「ふふ、怪しいなあ。本当は、夏服だとどこを見ていいかわからなくて困る、とか思ってるんでしょ?」
「なっ……! なんでそれを……いや、思ってない!」
完全に図星を突かれ、蓮の顔がカッと熱くなる。
「宮本くんは分かりやすいね。顔がすぐに赤くなるから」
真白さんはそう言うと、自分の左腕をすっと蓮の目の前に差し出した。
「じゃあ、そんなに困るなら、ここ、触ってみる?」
「はあああ!? なに言って……!」
「ほら、夏服だと衣替え記念で、触っても怒らないよ?」
いたずらっぽく笑う真白さんの瞳は、完全に蓮をからかって楽しんでいる。
「からかうなよ! 触るわけないだろ!」
「あ、怒った? 冗談だよ」
真白さんは腕を引っ込めると、窓の外を眺めながら小さく呟いた。
「でも、宮本くんが冬服の方が好きなら、早く冬にならないかなあ……なんてね」
その声はいつもより小さく、風の中に消えてしまいそうだった。蓮は自分の白いシャツの袖をぎゅっと握りしめ、早くも始まった夏の暑さに、ただ翻弄されるばかりだった。
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