第30話:席替えの噂
「来週のホームルームで、席替えを行う」
担任の先生が朝の連絡でそう告げた瞬間、教室中から「よっしゃ!」「えー!」と様々な声があがった。
蓮は一瞬、胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚を覚えた。
(席替えか……。真白さんのとなり、じゃなくなっちゃうのかな)
休み時間、蓮がぼんやりしていると、真白さんが机の上のノートを丸めて、蓮の頭をポンと叩いた。
「宮本くん、席替えだって。嬉しそうにニヤニヤしちゃって、私と離れられるからホッとした?」
「ニヤニヤなんてしてないよ! ……まあ、真白さんのからかいから解放されるなら、それもいいかもな」
蓮はわざと強がってそっぽを向いた。
すると、真白さんは少しだけ寂しそうな、拗ねたような顔をして、丸めたノートで蓮の頬をツンツンと突いた。
「ふーん……。宮本くんは、私と離れたいんだ。ひどいな」
「強がりだよ! 本当は離れたくないって顔に書いてあるもん」
「書いてないわ!」
「じゃあさ、もし次の席替えでも、また隣の席になれたら……それって、運命だと思わない?」
真白さんは、いつものいたずらっぽい笑顔に戻って、蓮の目をじっと覗き込んできた。
「う、運命なんて大袈裟だろ……」
「私は信じるよ。もし隣になったら、宮本くん、私にジュース奢ってね」
席替えの不安が、真白さんの一言で、なんだか少しだけ楽しみなイベントに変わっていく。蓮は彼女の魔法のような言葉に、今日もまた、完全に降伏するしかなかった。




