第28話:教科書の落書き
次の授業の準備中、蓮が国語の教科書を開くと、前のページの端に、見覚えのない小さなイラストが描かれているのに気づいた。
シャーペンで描かれた、眠そうな顔をしたデフォルメされた男子の絵。その下には『みやもとくん』と書かれている。
「おい、真白さん。これ、お前が書いたろ」
「えー? 何のこと?」
真白さんはすっとぼけた顔で、自分の教科書を読んでいる。
「何のことって、これだよ。俺の教科書に落書きするなよな。しかも、なんか不細工だし」
「えー、可愛く描けたと思ったんだけどな。あ、じゃあ、その絵の隣に、私の絵も描いておいてよ」
「何でだよ」
「だって、2人並んでた方が、寂しくないでしょ?」
真白さんは蓮の教科書を覗き込み、自分のシャーペンで、その男子の絵のすぐ隣に、リボンをつけた女の子の絵をササッと描き足した。2つの絵が、ちょこんと隣り合って並んでいる。
「ほら、これで『となりの席の真白さん』と宮本くんの完成」
「……お前、本当に自由だな」
「ふふ、授業中、寂しくなったらその絵を見てね。私のこと、思い出せるから」
蓮は「消すからな」と言いながらも、結局そのページを消しゴムで消すことはできず、授業中、何度もその2つの小さな絵に視線を落としてしまうのだった。




