第26話:消しゴムの角
休み時間、蓮が新しい消しゴムを筆箱から取り出した。
まだ一度も使っていない、真っ白で角がピシッと尖った綺麗な消しゴムだ。
「あ、宮本くん、新しい消しゴムだ。いいなー」
「だろ? このおろしたての角を使う瞬間が最高なんだよ」
「ふーん……。ねえ、宮本くん。その最初の角、私にちょうだい?」
「嫌だよ! 最初の角は俺が使うんだ!」
蓮は消しゴムを死守するように胸元に抱え込んだ。
「ケチだなあ。じゃあさ、勝負しよ? 私が宮本くんの『今の気持ち』を当てたら、角を触らせて」
「今の気持ち? そんなの簡単だろ。『真白さんに角を使われたくない』だよ」
「ブブー、ハズレ。宮本くんの今の気持ちはね……『真白さんの手が近くて、ちょっとドキドキしてる』、でしょ?」
真白さんはそう言いながら、蓮の持つ消しゴムに手を伸ばした。彼女の指先が、蓮の親指にふわりと触れる。
「なっ……! ち、違うわ!」
「あ、動揺して声が大きくなった。じゃあ、私の勝ちね」
真白さんは蓮の手からするりと消しゴムを抜き取ると、自分のノートの端で、一番尖った角を『ゴシゴシ』と丸めた。
「ああっ! 俺の角が……!」
「はい、お返し。……これでこの消しゴム、私と宮本くんの『共同作業』の消しゴムになったね。大切に使ってね?」
丸くなった消しゴムを見つめながら、蓮は「もう、真白さんには勝てないなぁ」と心の中で小さくため息をつくのだった。




