第25話:視線
授業中、先生が黒板に長い数式を書いている時間。
蓮はふと、となりの席からの視線を感じて横を向いた。案の定、真白さんがノートを開いたまま、じっと蓮の横顔を見つめていた。
「……何だよ、真白さん。俺の顔に何かついてる?」
「ううん。宮本くん、授業中どんな顔してんのかなーって思って」
「普通だよ。ほら、先生に見つかったら怒られるぞ」
蓮が小声で注意して前を向くと、真白さんはトントンと蓮の腕を小突いた。彼女はノートの端に文字を書いて見せてきた。
『宮本くんがこっち向いてくれるまで、ずっと見てよっと』
(くっ、そんなこと言われたら意識しちゃうだろ……)
蓮は必死に黒板を見つめるが、真白さんの視線が突き刺さるようで、全く内容が頭に入ってこない。耐えかねて、蓮はもう一度真白さんの方を向いた。
「分かったから、前向けって!」
「あ、やっとこっち向いた」
真白さんは嬉しそうに微笑むと、ノートの文字を素早く消しゴムで消し、新しい文字を書いた。
『視線に負けちゃう宮本くん、可愛いね』
「からかうな……」
「からかってないよ。だって、宮本くんがこっち向いてくれるの、待ってたんだもん」
前を向いた真白さんの耳のあたりが、ほんの少しだけピンク色に見えたのは、教室の気のせいだろうか。蓮はシャーペンを握り直したが、手汗で少し滑るのだった。




