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週間ランキング49位、月間ランキング74位『となりの席の真白さん』  作者: S.S
中学生 いたずらやからかい

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第2話:教科書

「……終わった」

朝のHRホームルームが始まる直前、蓮は絶望の声をあげた。

カバンの中をどれだけ探しても、1限目の国語の教科書が見当たらない。家に忘れてきたのだ。

国語の担当は、学校一厳しいことで有名な鬼頭先生だ。教科書を忘れたとなれば、廊下に立たされるか、居残りで反省文を書かされるのは確実だった。

「どうしたの? 宮本くん。顔が青いよ」

となりの席から、真白さんが覗き込んできた。

「いや……その、国語の教科書、忘れちゃって……」

「へえ、大変だね。鬼頭先生、すっごく怖いのに」

「笑いごとじゃないって! ああ、どうしよう……」

頭を抱える蓮に、真白さんは自分のカバンからすっと一冊の本を取り出した。

「しょうがないなあ。じゃあ、机くっつけよっか。見せてあげる」

「えっ!? い、いいのか!?」

地獄に仏。蓮は目を輝かせた。

「うん。ただし、条件があるよ」

「条件?」

「授業中、私が言うことに、全部『はい』って答えること」

「……それ、絶対ろくなこと企んでないだろ」

「じゃあ、先生に怒られる?」

真白さんは教科書を引っ込めようとする。

「わ、わかった!『はい』って言えばいいんだろ!『はい』って!」

キーンコーンカーンコーン。

非情にもチャイムが鳴り、鬼頭先生が教室に入ってきた。蓮は慌てて真白さんの机に自分の机をガツンとぶつけるようにしてくっつけた。

一冊の教科書が、二人の机のちょうど真ん中に置かれる。

いつもより真白さんの距離が近い。ふわりと、シャンプーのような甘い香りがして、蓮はそれだけで緊張してきた。

授業が始まり、先生が朗読を始める。

真白さんは真面目に教科書に目を向けているが、その右手はこっそりとノートの端に何かを書き込んでいた。

トントン、と真白さんが蓮の腕を小突く。

真白さんが指差したノートの端には、こう書かれていた。

『宮本くん、今、私のこと可愛いなって思った?』

(なっ……!!!!)

蓮は声を出しそうになるのを必死でこらえた。真白さんは、じっと蓮の顔を見つめている。

約束は「全部『はい』と答えること」だ。しかし、ここで『はい』と言えば、真白さんの思うツボ。かと言って声を出して否定すれば先生に見つかる。

蓮は顔を真っ赤にしながら、コクコクと首を横に振った。

すると真白さんは、さらにノートに文字を書き足した。

『「はい」って言わないなら、教科書閉じちゃうよ?』

真白さんの手が、教科書の端にかかる。鬼頭先生の視線が、一瞬こちらを向いたような気がした。

(クソ、卑怯だぞ真白さん……!)

蓮は覚悟を決めた。蚊の鳴くような、掠れた声で、真白さんにだけ聞こえるように呟く。

「……はい」

その瞬間、真白さんはパッと顔を輝かせ、嬉しそうにクスクスと笑った。そして、ノートに最後の文字を書いた。

『知ってた。私も、宮本くんのとなり、楽しいよ』

教科書の向こう側で、少しだけ耳を赤くしている真白さんを見て、蓮は心臓の音が先生に聞こえてしまうのではないかと、本気で焦るのだった。

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