第16話:アイスの棒
夏休みの登校日。蓮と真白さんは、部活の帰りに学校近くの駄菓子屋に立ち寄った。
2人はそれぞれ数十円の安いソーダ味のアイスキャンディーを買い、店の前のベンチに腰掛けて食べる。
「冷た。生き返るわー」
「本当だね。あ、宮本くん、食べるの早い。そんなに急いだら頭キーンってなるよ?」
「大丈夫だって……あ、イテテテ!」
お約束通り頭を押さえる蓮を見て、真白さんはクスクスと嬉しそうに笑う。真白さんはアイスを少しずつ、綺麗に口に運んでいた。
「あ、そうだ。これ、当たりが出たらもう1本もらえるんだよね」
蓮は食べ終えた木の棒をじっと見つめた。そこには何も書かれていない。
「ちぇ、ハズレか。真白さんはどう?」
「んー、どうだろう。まだ内緒」
真白さんはアイスの残りを口に含むと、棒の先端を手のひらで隠しながら、いたずらっぽく目を細めた。
「ねえ、宮本くん。もし私のやつが当たりだったら、どうする?」
「どうするって、もう1本もらいに行けばいいじゃん」
「それじゃ普通だし、面白くないよ。……じゃあさ、もしこれが『当たり』だったら、私の言うこと1つ聞いてくれる?」
「ええー……。じゃあ、もし『ハズレ』だったら、俺の言うこと聞いてくれるんだな?」
「いいよ。じゃあ勝負ね」
真白さんはゆっくりと手を退けた。木の棒には、黒い文字でハッキリと『あたり』の文字が印刷されていた。
「あ、本当に当たりだ!」
「ふふ、私の勝ち。じゃあ約束ね、宮本くん」
「うぐ……。何だよ、言うことって。変なことは無しだぞ」
蓮が身構えると、真白さんは自分の『あたり』の棒を蓮の手に握らせた。
「これ、宮本くんにあげる。お店に持って行って、もう1本もらってきて」
「え? それだけでいいのか?」
「うん。でも、新しくもらったアイスは、宮本くんが食べてね」
「いいのか? 真白さんの当たりなのに」
「いいの。宮本くん、さっきハズレてガッカリしてたでしょ? ……私の言うこと、ちゃんと聞いてね」
真白さんはベンチから立ち上がり、「じゃあね」と手を振って歩き出した。
蓮は手の中の『あたり』の棒を見つめながら、真白さんが自分のために勝負を仕掛けてくれたことに気づき、胸の奥が少しだけ、アイスとは違う意味でキュンとするのだった。




