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「まぁ、こうやって動かすのが筋かな。」
ジーンが駒を指した瞬間、観客席からゲラゲラと下卑た笑いがあがる。
「しょうもねぇ打ち方だな!」
「そんな手しかねぇなら、とっとと負けろよ、ばぁぁか!」
リンは騒ぎに惑わされず、盤上の動きを冷静に追っていた。
(ジーンは何か策を持っている……。駒を犠牲にせず勝つ方法。それを見抜かなければならない。)
その時、ジーンが懐から紙を取り出し、さらさらと何かを書きつけた。視線は右目を伏せ、左目だけで紙を睨んでいる。口元がわずかに吊り上がった。
(……なんだ? ただのメモじゃない。なぜペンを使う? 能力の一端か……? いや、決めつけるのは早い。動きを観察し、仮説を立てる。)
ジーンは再び駒を動かし、盤面がじわじわと形を変えていく。
「少し休憩してもいいかな? 始まったばかりで悪いけど。」
観客席からは怒号が飛んだ。
「ふざけんな、続けろ!」
「その場で漏らせばいいだろ!」
「そうだそうだ、漏らせ漏らせ!」
「……いいでしょう。退出を許可します。」ナタルが告げる。
「ありがとうございます。」ジーンは深々と頭を下げ、唇の端をいやらしく歪めた。
リンは盤面を見つめながら、さらに思考を深める。
(何を企んでいるの……?奴がトイレに行くことで何かヒントになることは。)
リンはずっと頭をかき始めていた。
ジーンはゆっくりと会場の扉への方へ向かった。そして扉を開ける前にニヤリと笑った。
絶対何かこのゲームの何かを掴んでいる。全てのこと可能性を考える。まずジーンはこのゲームで誰も犠牲に出さずにクリアする策を持っていると言っていた。これは絶対ハッタリなんかじゃない。チェスだけは何千回とやってきたことだが、チェスの駒を一度も取らせずに勝たせるのは不可能。それができるなら、この国いや世界的にチェスの王者と言っても誰も反対しない。だからこそ、普通の駒を動かす以外に何か策がある。それはジーンの能力。そしてその能力は、紙に書くことによって発動する。そしてルール上私には効果はない。そうなると、駒にイカサマを仕掛けなければならない。例え私より能力が上でも、私と同じ劣化能力。普通の能力と違って、効果範囲や効力は弱いはずとなると、操作の可能性はない。私も自分の駒を操作しているがここから少し離れると、効力が弱まってしまう。
だからこそ、駒には何もしていない。となるとどんな能力だ。冷静に考えろ考えるんだ。私ならどうやったら駒を犠牲にせずに勝つ方法があるはずだ。でもどうしても犠牲にせずに勝つには。
「あっ」
思わずリンが声に出してしまった。もし相手の先の動きを読めるならいける。それにトイレの距離はそう長くはないが、射程範囲外のことを考えると、やつの能力は未来予知。未来予知ならどんな場所でも手は読める。自分を能力の対象とすれば、そしてその未来の出来事は紙から見れる。




