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部屋に入ると、そこには数人の囚人たちが待ち構えていた。どれも強面で、獣のような目つきでこちらを睨んでいる。鉄格子の窓から射し込む薄暗い光に、彼らの影が歪んで揺れた。
ジーンは肩を竦め、飄々とした調子で口を開いた。
「えっと、まずは挨拶をしようかな。どうもジーンです。皆さん、よろしく」
だが返ってきたのは沈黙。怒号が飛ぶでもなく、ただ無言のまま睨みつける視線が突き刺さる。圧迫感は、鉄鎖より重かった。
それでもジーンは眉ひとつ動かさず、淡々と言葉を続けた。
「なぁ……もし俺が、“誰も死なない作戦”を持っている、と言ったら? その話、聞く気はあるか?」
その瞬間、一人の囚人が立ち上がり、机を叩き割らんばかりの勢いで声を荒げた。
「なにふざけたこと言っとるんや! われ、なめとんのか!」
胸ぐらを掴まれたが、ジーンは微動だにせず、涼しい顔を保つ。
「はっ……何がだ?」
「誰も死なずに勝てる方法やと? そんな与太話で、俺らが簡単に騙されると思っとるんか!」
「そうか……まだ聞いたほうがいいんじゃないか?」ジーンは片眉を上げる。
「お前ら、もう生きることを諦めてるだろ」
その言葉に囚人たちは一瞬息を呑み、しかし意地を張るように吐き捨てる。
「俺たちは死ぬ。絶対に負けるってな! そんなに相手チームが怖いんか!」
「……あぁ、怖くねぇよ」
そう口を挟んだのは別の囚人だった。だがその膝は微かに震えていた。ジーンはそれを見逃さず、鋭く指摘する。
「じゃあ、なんで足がガクガクしてるんだ?」
「い、いや、これは……」
「相手はそんなに強いのか? 怖いくらいに」
すると、もう一人の囚人が立ち上がり、苦々しく言葉を吐いた。
「そうさ……怖いに決まってる。あいつらは俺たちの中でも特に強いやつらばかりだ。十人の男を軽々と持ち上げる怪力のゴラン。誰の目でも追えないほど速いサガ。……そして、そいつらを力で従えるリーダーのベン」
ジーンは口角を吊り上げる。
「なるほどな。だが、それでも俺なら勝てる」
「嘘つけ、本当は策なんざ無いんじゃねぇのか!」
「まぁ信じるかは好きにしろ。でもな――希望を持って死ぬのと、絶望を持って死ぬのとじゃ訳が違う。お前らはどっちを選ぶ?」
囚人たちは押し黙る。重苦しい沈黙の中、ジーンだけが軽く笑みを浮かべていた。
「俺なら――100%のバッドエンドより、数%のハッピーエンドに賭けるね」
「……本当に勝てるのか?」
「勝てるよ。十分にな」ジーンは言い切った。だが心の奥では、(――もちろん、まだ完全じゃない。けど、勝算はある)と密かに呟く。
「まあ一応確認したいことがある。体調悪いやつとか、持病持ってるやつはいないか? 正直に答えろ。そうでないと――自分たちが死ぬ羽目になる」
「俺は特にねぇな」
「俺も大丈夫だ」
「今日はなんか頭が痛いが……気分はそこまで悪くない。やれる」
口々に体調を告げる囚人たち。その表情には、ほんの僅かだが“生きたい”という色が差し始めていた。




