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ざわめきに包まれた会場。煌びやかな照明が照り返し、中央の盤上に視線が集中していた。緊張と興奮の熱気が渦巻く中、ジーンは人混みを縫いながら歩く。彼の足取りは迷いなく、獲物を見つけた獣のような眼差しが一点を捉えていた。
その先にいたのは、鋭い光を帯びる女――ヘリーナ。観客や囚人でさえ無意識に距離を取るほどの気迫を放つ彼女に、ジーンは肩をすくめるように近づき、皮肉めいた笑みを浮かべた。
「俺がその話を受けると思うのか? 俺を殺そうとしている人間に」
挑発めいた低い声。ヘリーナは唇を吊り上げ、逆に挑みかかるように応じる。
「ふふ……でも、あんたなら受けるでしょう? たとえ私が後でどう殺そうとも」
――やれやれ。ジーンは頭をポリポリとかき、余裕を見せつけるように言葉を返した。
「――いいだろう。このゲーム中だけ、お前と俺の視覚を共有する。その報酬は懸賞金の一割、二千ルクスだ」
彼の声音は静かだが、周囲にいた囚人たちの耳を撃ち抜いたようだった。ざわめきが走る。視覚を共有? 本当にそんなことが可能なのか――誰もが疑いの目を向けた。
「……本当にできるんでしょうね? もしできなかったらどうするのかしら」
ヘリーナの声には明らかな疑念が混じり、眉間に深い皺が刻まれていた。
ジーンは間を置き、口角を上げる。
「ならこうしよう。もし俺のミスでお前が負けたら、俺が懸賞金の半分を支払う。逆に、成功すればお前から半分をもらう」
大胆すぎる提案。まるで狂気じみた賭けのようだ。
「なっ……! なんでそうなるのよ!」
ヘリーナの表情が険しさを増し、声が震えた。
ジーンは涼しい顔で言葉を続ける。
「この内容だと契約というよりは賭けだからな。互いが大きなリスクを賭けてこそ成立する。お前にとっても悪くないはずだ。勝てば、俺を死に追いやれる可能性があるんだからな」
その声音は淡々としているのに、刃のような冷たさが潜んでいた。
ヘリーナは苦虫を噛んだように顔を歪める。拳を握り締め、必死に冷静を保とうとするが、その動揺は隠せない。
ジーンは軽く息を吐き、声を和らげた。
「……不満なら三割でいい。それならどうだ?」
ヘリーナの表情から険しさが消え、ほんのわずかに安堵の色が差した。だが、ジーンはその隙を逃さず、声を低めて付け加える。
「だが――残り二割分の価値は、いつか必ずお前に請求する」
ヘリーナはわずかに眉をひそめたが、すぐに薄笑いを浮かべた。
(30%になったし、20%分の価値といっても、大したことないでしょう)
「……それなら、契約するわ」
ジーンは静かに笑みを深め、囁くように言葉を落とした。
「これで契約できたな。」




