表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界遊戯  作者: 王子大好物
魔女裁判
24/45

23

 ジーンは口の端をわずかに吊り上げ、盤上の最後の一手を示すように指先を振った。

「そして――吊るしの終了時だ。魔女の呪いで奴らがのたうち回る時、お前らがカードを回収する。二枚以上を押さえれば、そこで決着だ」

 沈黙が落ちる。作戦の全貌を理解した瞬間、相手の目がわずかに見開かれた。

「……なるほど。そういう手を考えていたのか。これで俺たちの勝ちは揺るがない」

 短く息を吐き、仲間の一人が無造作にナイフを持ち上げた。

「じゃあ――神父の野郎を始末してくる」

 そう言い、ダリルとナリノを部屋から先に出させて、その後ジーンが出ていった。

ダリルとナリノは神父の部屋の前にいくと、コンコンとノックをした。

特に反応がないため、ナリノが中に入り、安全を確認した後、ダリルが入った。

そしてダリルが神父を抑える準備をして、ナリノが寝ている神父の横ポケットを軽く触り、カードがあることを確認するとすぐさまポケットからカードを抜いた。そうすると目の前で首を掻きむしりもがき苦しみ始めた。

ナリノ達は焦り口を抑えた。神父はそのまま息がなくなった。二人ともバレずにいけたと思われたが、ヘリーナにバレていた。

彼女はクローゼットの中から見ていたのだ。

心臓が跳ねた。

(ナリノが……人狼……)

 その事実が、冷たい杭のように胸に突き刺さる。息が浅くなり、喉の奥がひゅっと鳴った。

 見間違いじゃない。暗がりでも、あの横顔を見間違えるはずがない。

 何度も、何度も、夢に見た横顔。笑うときの目尻のしわまで、知っている。

 なのに――その手は、神父の命を奪っていた。

もうあの優しさのある子供のような彼ではなく、汚い大人の顔だった。

それでもヘリーナにとって、ナリノはナイトだった。

ヘリーナは無能力者なため、遊戯に売るために両親が部屋に閉じ込めたのだ。

 その額は高額ではないものの、平民の食費の半月分だったため、こうなった。

 そんな夜の日、暗い部屋の中でひとり丸くなっていたとき、窓越しから――コン、コン、と小さな音がした。

 カーテンをそっとめくると、そこにいたのは近所の少年、ナリノだった。

 ナリノはもともと市場の荷運びを手伝う働き者で、誰にでも分け隔てなく笑う少年だった。

「逃げたいか?」

 そう囁く声は不思議と落ち着いていて、ヘリーナは何も考えずにうなずいていた。

 その夜、二人は人目を避け、裏路地を走り抜け、町外れの土手まで抜け出した。

 月明かりに照らされた横顔を、ヘリーナは忘れたことがない。

 あの時、彼は確かに自分を守ってくれる“ナイト”だった。

 ……だからこそ、今目の前にいる“人狼”としての彼を受け入れられない。

そしてヘリーナは必死に思考を巡らせる。

(ジーン……あの男はどっちの味方なんだろう。表向きは村人だろうけど……吊られるのを避けたいだけかもしれない。いや、吊るしの後の“呪い”を恐れているのかもしれない……)

 頭の中で、可能性がぐるぐると渦を巻く。

(もしそうなら、私を駒にして……この二人を始末させようとしている? でも、投票は一人しかできない……)

 胸がぎゅっと締めつけられる。

(となると……私は狙われる? いや、昼の間は襲撃はない……? じゃあ――昼のうちに、私が動くしかない)

 思考は混乱している。それでも一つだけ、はっきりしていることがある。

(ナリノを……助けなきゃ)

 唇を噛み、ヘリーナは気配を殺したままクローゼットの闇に沈んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ