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ジーンは、ヘリーナとの会話を終えてから一時間後、音を立てぬよう自室の扉をそっと押し開けた。
廊下はしんと静まり返っている。足音ひとつしない。
左右を確認し、誰の影もないことを確かめてから、彼はゆっくりとナリノの部屋へ向かい、二度ノックした。
数秒の間を置き、ドアが軋むように開く。
現れたナリノは眠たげな目をしながらも、低い声で言った。
「もう時間なのか? もっと早くても良かったんじゃないのか」
「……色々と考えていてな」
「そうか。なら、ついでに一つ聞きたいことがある」
「その話は後だ。まずはダリルの部屋で話そう」
三人目の仲間の部屋の前に立つと、ジーンは軽く扉を叩き、躊躇なく中へ足を踏み入れた。
「よぉ、ダリル。悪いが、計画の確認だ」
ジーンは低い声で指示を出す。
「まず、神父の部屋に軽くノックをしろ。そのまま入ってもらう。反応があってもなくても構わん、必ず部屋に入り、カードを奪え。ダリル、お前も同行しろ。もし起きていた場合の保険だ」
淡々と告げられる言葉に、部屋の空気が張りつめる。
ナリノが口を開いた。
「さっき言おうと思っていたんだが……お前、この作戦が成功すれば間違いなく疑われるぞ。ルール上、殺されないと言ったのはお前だ。まさか、俺たちを道連れにする気じゃないだろうな」
ジーンは薄く笑った。
「……一日目の会議で、俺の偽ルールに気づいた奴がいたんだ」
その声色は妙に静かで、逆に耳を刺す。
「そいつは指摘しようとしたが、場の空気に流されて黙った。その理由を、俺は突くつもりだ──なぜ黙ったのか、とな」
ダリルが眉をひそめる。
「……だが、証拠なんてないだろう」
「証拠なんざ、でっちあげればいい」
ジーンは肩をすくめ、まるで取るに足らないことのように続けた。
「夜中、隣の部屋から物音がして目を覚ました。廊下を覗くと、そいつが歩いていた──それで十分だ。この状況じゃ、証拠よりも“いつ、誰が何をしていたかを把握している”という印象のほうが効く」




