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異世界遊戯  作者: 王子大好物
魔女裁判
21/45

20

ヘリーナが戸惑いながら言葉を詰まらせている間に、ジーンはためらいもなく部屋へ足を踏み入れた。

「お邪魔する」

その声は妙に落ち着いていて、まるで自分の部屋に帰ってきたかのようだった。

「ちょっと、あんた、何してるのよ!」

ヘリーナが慌てて声を荒げる。


「落ち着け」

ジーンは軽く手を上げて制した。その動作には無駄な力も焦りもない。まるで全てが予定のうち、というように。


「それで――あんたが本当に元魔女だって証拠は?」

ヘリーナの視線は鋭く、相手の目を射抜くようだった。


「証明なんてできない。やれば俺は死ぬからな」

ジーンはあっさりと返す。声に迷いはなかった。


「じゃあ、嘘つき魔女の可能性もあるわけね」


「あるさ。だがもし俺が嘘をついていると分かったら――お前は聖女だ、俺をすぐに吊るせるだろ」

ジーンは視線を外さず、淡々と続けた。

「危ない橋を渡るのは、俺の方だ」


ヘリーナは眉をわずかにひそめ、心の中で言葉を反芻する。

(確かに……こいつは誰とも馴れ合ってない。一緒にいたあの子とも距離があった。もし本当に元魔女なら――)


部屋の外では、廊下を吹き抜ける冷たい風の音だけが響いていた。緊張が、じわりと二人の間を満たす。


「……それで?」


「今夜、ガーヴィンの身に“何か”が起こる。ガーヴィンの部屋のクローゼットに隠れていろ。

 お前の欲しい答えが、そこに現れる」


「それって……魔女の正体が分かるってこと?」


「肯定も否定もしない。ただ――そこに行けば、このゲームを終わらせられる」


ヘリーナは短く息をついた。

疑いは消えていない。それでも、心の奥に小さく芽生えた期待を無視できなかった。


「信じたわけじゃない」

低く言い切る。

「でも――私は、このゲームを終わらせたい」

ジーンの口元に、わずかな笑みが浮かんだ。

「……ありがとう」

そう言うと、彼は勢いよく立ち上がり、ヘリーナの肩をがしっと掴んだ。


「ちょ、なに――」

抱き寄せられた瞬間、ヘリーナのこぶしが反射的にジーンの頭頂を叩く。

「やめろ、バカ」

鈍い音がして、ジーンは眉をしかめながら頭を押さえた。


一瞬だけ空気が緩む。それでも、互いの瞳の奥にある緊張は、まだ解けていなかった。

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