19
ジーンはひとしきり呼吸を整えたあと、
キーヴォンの死体を彼の部屋に運ぶことを決めた。
「……ナリノ、手を貸せ」
声をかけ、二人で死体を抱え上げる。
しかしジーンはわざと力を抜き、重さに耐えられないふりをした。
するとダリルがすっと前に出て、無言でその役目を引き受けた。
途中、ナリノが何かを話しかけようとした瞬間、
ジーンは冷たく言い放つ。
「今は、喋る気分じゃない」
言葉に、ナリノは黙るしかなかった。
キーヴォンの部屋に着くと、一度死体を床に下ろす。
ジーンがドアを開けると、再び抱えられた死体は静かにベッドに横たえられた。
ジーンはナリノの耳元に顔を寄せ、低く囁く。
「夜になったら……ダリルと二人で神父を殺せ。俺はシャルロッテをやる。
時間になったら俺が呼びにいく。」
そしてすぐに自分の部屋へ戻るよう命じた。
ナリノとダリルが去った後、ジーンは一人、その部屋に残る。
――何をしていたのか、誰も知らなかった。
やがて戻ってきたジーンの表情は無表情だったが、
その視線はわずかに揺れていた。
それは、仲間の死を悼むようにも、計画を練る者の目にも見えた。
話し合いの場に戻ると、そこには誰もおらず、
吐瀉物と引っかき傷が殺風景さを際立たせていた。
ジーンは誰もいないことを確認し、ある部屋へ向かう。
扉をノックすると、
「誰よ。こんなときに。何あんたか。で、何の用」
ヘリーナの声が部屋の中から返ってきた。
「話がしたい。部屋に入れてくれないか」
「なんで?あんたを入れなきゃいけない理由があるの?」
ジーンは静かに耳元で囁いた。
「俺が元魔女だといったら、入れてくれるか?」




