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最初に口を開いたのは、輪の中心に立つナリノだった。
「まず言い出しっぺの俺から話す。俺の名前はナリノ。職業は市民だ」
軽くカードを掲げ、すぐ下ろす。視線は一切ぶれない。まるでそれだけで信用を勝ち取れると信じているような態度だった。
「ヘリーナ。……聖女」
続いて名乗ったのは、ナリノの横にいた女だ。冷たい声音に感情はほとんどない。こちらを見もしないまま、さらりと口にする。初めて会ったときから感じていたが──愛想というものが、この女には存在しない。
「ダリル。市民だ」
低く短い一言。ジーンと昨夜話していた男だ。視線が一瞬、ジーンの方へ流れたが、すぐ逸らされた。表情からは何も読み取れない。
「我が名はガーヴィン。職業は神父だ」
長身の男が胸の十字架に指をかけ、静かに礼をする。その所作はやけに芝居がかっており、かえって本物らしさを疑わせた。
「ジーン。職業は……市民だ」
そう告げると、ジーンはカードを軽くひらつかせてポケットへ戻した。口元に笑みはない。誰にも余計な情報は渡さない──その意志が動きに滲んでいた。
「シャルロッテと申します。職業は市民」
最後に名乗ったのは、ふわりと金髪を揺らす女。声色は柔らかいが、その瞳はどこか測りかねる深さを湛えている。
こうして最初の自己紹介は終わった。だが──この中に確実に“首絞め”を呼ぶ者がいる。
その事実だけが、重く、静かに場を支配していた。
他の参加者も口を開いたが、特に怪しい素振りは見られない。
それも当然だ。彼らは、本当のことを言っているのだから。
沈黙が落ちかけたとき、ジーンが口を開いた。
「話し合いの前に、ルールを確認しておきたい」
「……なんで確認する必要があるのよ?」
即座に反応したのはヘリーナだった。視線は冷たいまま。
「簡単な話だ」
ジーンは淡々と続ける。
「もしルール違反をしたら──そいつは殺される」
「このゲームは魔女が二人、残りは八人。……数字だけ見ても、市民側が死にやすくて不利なのは明らかだ。だからこそ、ルールはちゃんと確認しておくべきなんだ。」




