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「――カードを奪う? ……それで勝てるって寸法か?」
訝しげな声が空気を震わせた。だが、ジーンは淡々と頷いた。
「ああ。カードを奪えば、“首絞め”のターンが短縮される。つまり、ゲームが早く終わる分――俺たちが死ぬ可能性も減るってわけだ。それに、証拠なんて、そうそう残らない」
その声音は冷たく乾いていて、まるで冷蔵庫の中の残り物でも語るようだった。
「うまくいけば、あとは残った連中に“疑い”をばらまくだけでいい。理由なんて、後から作ればいい。“怪しい”と誰かが思えば、それだけで“処刑”の土俵に立たせられる」
静寂が落ちる。言葉の刃が、仲間たちの思考にゆっくりと食い込んでいく。
だが、それを断ち切るように天井のスピーカーが鳴った。
『それでは、時間です。各自、自室へお戻りください』
ジーンは肩をすくめ、背を向ける。
「――ターゲットは、あとで教える」
その言葉だけを残し、静かに廊下へと消えていった。
翌朝
『みなさーん、おっはようございまーす! 本日より第一日目のゲームが開始されます。朝食をお済ませの上、リビングへお越しくださいね~♪』
脳に響くような軽薄な声が、部屋に響く。
ジーンは天井を一瞥すると、静かにベッドから起き上がった。机の上には質素な朝食――冷めたパンとスープ、それにリンゴの薄切りが並んでいる。
「……囚人食かよ」
皮肉を一つ漏らし、彼は無言でそれを口に運んだ。
食事を終え、部屋を出てリビングへと向かうと、すでに他の参加者は集まっていた。
「おはよう」
軽く手を上げて挨拶するジーン。その声に、地味な平民風の少年が噛みつく。
「……お前さ、緊張感ねぇのか?」
「どうして?」
ジーンが首をかしげると、少年は苛立ちを隠そうともせず言い放った。
「みんな、もっと早く来てんだよ! 一人だけ悠長に……何様のつもりだ?」
ジーンは一拍おいて、わずかに口元を緩めた。
「そうだな。時間制限もあるし、次からは気をつけるよ。――ごめん」
「わかればいいんだよ、わかれば」
少年は不満げに鼻を鳴らしながらも、それ以上の言葉はなかった。
場の空気が冷める前に、ナリノが声を上げる。
「とりあえず、自己紹介でもしようか。名前だけでもいい。まずは会話から始めないと」




