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――切り替えようか、切り替え、切り替え!」
ヌルノ・ビーンが愉快そうに手を叩き、声を張り上げた。
「それでは皆さん、会場にご案内します。こちらの魔法陣の上にどうぞ。十人が余裕で乗れる設計ですのでね、さあさあ、入った入った!」
促されるままに、ジーンたちは床に描かれた大きな魔法陣の上へと歩を進めた。淡く青白い光を帯びた紋様は、どこか吸い寄せられるような魅力を放っている。
全員が揃ったのを確認すると、ヌルノはにやりと口元を歪めた。
「それでは、ゲーム会場でお会いしましょう」
次の瞬間――視界がぐにゃりと歪む。
***
転送が終わると、そこは先ほどまでの殺伐とした闘技場とはまるで別の場所だった。
天井から吊るされた鉄製の蝋台に灯る炎が、揺らめく影を壁に投げかけている。部屋の隅には調理台、長テーブル、椅子が並び、質素ながらも清潔に整えられていた。石造りの壁と木の床が織りなすその雰囲気は、まるで山奥のコテージのようだ。
「こちらが皆さんの“拠点”となります。今後数日、ここで生活をしながらゲームを進めていただきます」
いつの間にかヌルノが現れ、朗らかに案内を続ける。
「奥の廊下には、皆さんそれぞれの名前が記された部屋がございます。中に入れば、役職カードをお渡ししますので、順番に確認してくださいね」
参加者たちはそれぞれ、自分の部屋へと向かっていく。ジーンも廊下の奥、自分の名札が掲げられた扉を開いた。
部屋は簡素だった。だが、その中央に置かれた老婆の人形が異様な存在感を放っていた。膝の上に据えられた水晶玉が、不気味に脈打つように光を放っている。
やがて水晶の奥に、古代文字のような文がゆっくりと浮かび上がる。
「この水晶に触れよ」
ジーンは小さく息を吐き、迷うことなく手を伸ばす。
冷たい感触と共に、脳裏に直接語りかけるような声が響いた。
「あなたの役職は――元魔女」
その瞬間、ジーンの眉がわずかに動いた。
(……ああ、なるほど。これが来るか)
“元魔女”――過去に魔女として裁かれ、今は表向きは更生済み。だがこのゲームにおいては、魔女の正体を知る唯一の存在。そして、その真実を誰かに伝えた瞬間に死亡するという、残酷な呪いを背負った役職。
ジーンは水晶から浮かび上がったカードを静かに手に取る。
薄く、硬質な魔力の膜でできたカードには、燻銀の文字で「元魔女」と刻まれていた。
それをコートの内側にしまい込みながら、ジーンは口元を吊り上げる。
「さて……どう使おうかな。」




