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異世界遊戯  作者: 王子大好物
魔女裁判
12/45

11

――切り替えようか、切り替え、切り替え!」

 ヌルノ・ビーンが愉快そうに手を叩き、声を張り上げた。


「それでは皆さん、会場にご案内します。こちらの魔法陣の上にどうぞ。十人が余裕で乗れる設計ですのでね、さあさあ、入った入った!」


 促されるままに、ジーンたちは床に描かれた大きな魔法陣の上へと歩を進めた。淡く青白い光を帯びた紋様は、どこか吸い寄せられるような魅力を放っている。


 全員が揃ったのを確認すると、ヌルノはにやりと口元を歪めた。


「それでは、ゲーム会場でお会いしましょう」


 次の瞬間――視界がぐにゃりと歪む。


 ***


 転送が終わると、そこは先ほどまでの殺伐とした闘技場とはまるで別の場所だった。


 天井から吊るされた鉄製の蝋台に灯る炎が、揺らめく影を壁に投げかけている。部屋の隅には調理台、長テーブル、椅子が並び、質素ながらも清潔に整えられていた。石造りの壁と木の床が織りなすその雰囲気は、まるで山奥のコテージのようだ。


「こちらが皆さんの“拠点”となります。今後数日、ここで生活をしながらゲームを進めていただきます」


 いつの間にかヌルノが現れ、朗らかに案内を続ける。


「奥の廊下には、皆さんそれぞれの名前が記された部屋がございます。中に入れば、役職カードをお渡ししますので、順番に確認してくださいね」


 参加者たちはそれぞれ、自分の部屋へと向かっていく。ジーンも廊下の奥、自分の名札が掲げられた扉を開いた。


 部屋は簡素だった。だが、その中央に置かれた老婆の人形が異様な存在感を放っていた。膝の上に据えられた水晶玉が、不気味に脈打つように光を放っている。


 やがて水晶の奥に、古代文字のような文がゆっくりと浮かび上がる。


「この水晶に触れよ」

 ジーンは小さく息を吐き、迷うことなく手を伸ばす。

 冷たい感触と共に、脳裏に直接語りかけるような声が響いた。


「あなたの役職は――元魔女」

 その瞬間、ジーンの眉がわずかに動いた。

(……ああ、なるほど。これが来るか)


 “元魔女”――過去に魔女として裁かれ、今は表向きは更生済み。だがこのゲームにおいては、魔女の正体を知る唯一の存在。そして、その真実を誰かに伝えた瞬間に死亡するという、残酷な呪いを背負った役職。


 ジーンは水晶から浮かび上がったカードを静かに手に取る。


 薄く、硬質な魔力の膜でできたカードには、燻銀の文字で「元魔女」と刻まれていた。


 それをコートの内側にしまい込みながら、ジーンは口元を吊り上げる。


「さて……どう使おうかな。」



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