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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
10章 月は東に日は西に

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138:魔義体の技術をくれ

 今日という日は今まで生きてきた日常の中でも辛い1日になりそうだな……


 目の前に広がる光景を眺めながらそんな事を思い浮かべる。


「どうするんですか、ジーニャッ!? 妹とは言え、奇跡協会に属している僕は貴女(あなた)(かばい)い立てすることはできませんよッ!」


「に、にいちゃ……」


「にいちゃ、じゃないですッ! 兄さんです! ジーニャ、クラン長としてどうするんですか!!」


「そ、それは……だって……」


「さぁ、答えなさい! この事態の収拾はどうするんですかッ!?」


 目の前で繰り広げられる叱責(しっせき)

 クラン員も少し離れたところからオドオドと見守っているが、実際どうするんだと思っているのは同じようで、うんうんと(うなず)いている。


 ここ、俺が使わせてもらってる部屋なんだけどな……場所だけでも移さないか?


 そう言いたくなるも下手に口を(はさ)み辛い。


 そしてどうやら今、ジーニャに怒り心頭で話している男は兄らしい。

 未だに名前も聞けていないが、ジーニャが兄ちゃと言っている事からの推測だ。


 俺の目の前で彼は項垂れた後、再度大声でジーニャを呼び出した。

 そして割とすぐに、すごすごとジーニャが姿を現し、そこからはずっと同じような問答を繰り返している。

 このやり取りが何度目か分からないほどだ。


 ジーニャは割と能天気に問題を起こして、能天気に流すもんだと思っていたが、兄には弱いようだ。

 面倒だ、と思いながらも声をかける。


「……なぁ、少し良いか……?」


 俺の言葉で再び叱りつけようと口が開きかけていた彼の口は閉じられる。

 そして、一時の静寂(せいじゃく)を得た室内で俺が口を開く。


「まずは落ち着いて話し合おう。あと、客室(ここ)じゃなくて廊下の先にある広間で話そうか」


 苦笑しそうになる表情を必死に抑え、真顔で告げた。



☆★☆



 やっと場所を移し、対面にジーニャと兄の二人が座っている。

 クラン員はしばらく別室にて待機してもらっている。


 正直、気が散ってしまいそうだったからな。


「で、だ。改めてになるが……ディアナ王国で冒険者をやってるノーマだ。『百花繚乱』のクラン長って言った方が分かりやすいか」


 笑顔で告げると、彼――ジーニャの兄も改めて深呼吸して口を開いた。


「僕は奇跡協会所属の魔具師のオーディーと申します。先ほどは失礼いたしました。みっともないところをお見せして……」


 まぁ、身内が何かやらかした場合、俺も似たような経験がある。だから気持ちは少しは分かるんだが……流石にしっかりとケジメを付けてもらうか。


「個人的にどうこうってのは、せいぜい誘拐された事を訴えでるくらいだ。それでも中々な話だがな……ただ、それで事態が収まるとも思えない。『百花繚乱』としても、このままじゃ舐められっぱなしに見えるからな」


「……えぇ、理解しております。ですので、愚妹(ぐまい)にどうするのか?と問い(ただ)していた訳ですが、この有様です」


 頬をグニッと(つね)られ、「いはいいはい……!!」と涙目で訴えるジーニャ。


 色々と重なったせいでなぁなぁで済ましてた俺も悪いが、少しは反省すると良い。

 実際、大問題をやらかしてるからな。


 まぁ、助け船が無い訳では、ない。


「そこで、だ。今回、俺としては一つだけ可能性があると思ってるモノがあってな。『機巧の旗』の魔義体の技術をくれ」


「はい?」


「まんまの譲渡が無理なら、せめて魔義体の劣化版で良いんだが、どうだ?」


「……いやいや、ジーニャが作ったとは言え、それは奇跡協会の承認があったからで、そんな簡単に――」


「良いぞッ! それで事が収まるなら私は構わないッ! それにノーマが使って感想くれるなら、こちらとしても――」


「この、バカッ!! 口約束でも簡単に言ってどうするんですッ!!」


「だ、だって、それで丸く収まるなら……兄ちゃ」


「よし……! じゃぁ、交渉は頼んだからな」


 矢継ぎ早に会話を()める。これで両者合意の口約束だ。

 口約束でも冒険者――クラン同士の約束を取り付けた。これを反故(ほご)にはしづらい。


 だが、無理だった場合の対価もそれなりのモノが求められる。

 故に今の同意は……最悪、『機巧の旗』が『百花繚乱』の傘下に収まるレベルの締結を即決でした事になる。


「……ノーマさん、確約はできませんからね。そして、どこまで考えての発言かは分かりかねますが、もしも無理だった場合の対価に非道な扱いまでを考えての発言であれば、奇跡協会としても看過(かんか)は――」


「そこまでする訳ないだろうが……そこのちびっ子じゃねぇんだから……」


 俺の言葉に先ほどのキッとした目線が潤みだすと、机に額を打ち付け顔を隠す。妹の非道な行動から始まった騒動(そうどう)である事に()じいるオーディーの姿がそこにはあった。


 こいつも難儀(なんぎ)な性格してんなぁ……そんな事を言えば、お前が言うなって言われるのに……まぁ、馬鹿な事やらかしても、身内だから守ってやりたいって気持ちは分かってやりたいが……こっちが被害者なのは変わらんしな、許せ。


 オーディーが突っ伏した姿勢のまま抓られ痛がるジーニャの姿に俺は苦笑してしまう。


 これで、こっちの件は俺が出張らなくてよくなった。あと俺自身がやるのは、『百花繚乱』のみんなに納得させなきゃいけないって事だな……

 それが一番、面倒くさそうなんだよなぁ……


 気付けばオーディーはジーニャの両頬を抓る姿に変わっていた。


 さ、そろそろ切り上げて……

 『機巧の旗』のジーニャと『奇跡協会』のオーディーを連れて、『百花繚乱(みんな)』の元に向かうとしますかね。

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