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転生先は三代目魔王さまです  作者: 神坂将人
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時代を生き抜いた男

 ~第六階層~


 「ん~むっ♡」


 ヨシが投げキッスをすると向かった相手、カイの後ろにヨシが瞬間移動する。攻撃が当たる前に刀でいなすが、先ほどからその攻防が続いている。


 丸太のように太い腕が、刀ごと身体を吹き飛ばすが、空中で体制を変えダメージを受けずに地面に着地する。


 しかし、それを見てもヨシは顔色変えず、ニヤニヤと笑っている、まるで無駄なことして、何もできずにただいたずらに時間が過ぎる時、都合がいいおもちゃを見つけたように、ただ、その様子はどこかわざとらしく、何かを待っているようだった。


 その事に気付いた二人は意識して、そして、理解した。今いる階そのさらに上に言い知れぬ不快感と瘴気が漂い始めていることに、身も凍るような気配は今もなお、その存在感を増し続けている。


 「うふっ、あぁ、まだ、まだなのかしら」


 ヨシは悪い笑みを浮かべながら、呟く。


 「遥か昔、まだ、人間の知識が余りにも小さく、滑稽な行動しかできなかった時代、アタシはその時代を生き抜いた、一つの時代を生き延びるのは簡単じゃないの、ただ、運が良ければ生き延びることなんてそれこそ奇跡、アタシが生き延びる事が出来たのは身体、精神、細胞、全てがアタシの生存を望んだからこそ出来た必然的運命」


 「運命だと?」


 「そうよ、アタシは選ばれたの、この世界には必要な物が揃っている、その状態で私達を望んだ神さまが粛清を使ったらどうなると思う?それはね…全てがリセットされるのよ」


 「なんで、なぜそんなことをする、そんな事をしたら、お前も死ぬことに…」


 「さっき言ったはずよ、アタシは一つの時代を生き抜いたんだから、それにこの時代も生き残れる理由があるのよ、それわね…?」


 そう言うとヨシは服を脱ぎ始める。すると、ヨシの身体はボコボコと膨らみ始め、身体中の筋肉や骨がギシギシと唸り声のような音がする。


 音が鳴りやむとそこには、筋骨隆々な大男、その姿は今まで見てきた魔人とも人間とも似つかない褐色の肌に頭には四つの角が生えている。


 見たことがないはずなのにそれを見た二人の頭の中にはある種族の名前が浮かび上がる、「オーガ」それが今目の前に立っている者の種族としての名前だと直感的に理解する。


 「んふ、この姿を見せるのはあなた達が初めてよ♡なんたってアタシ、シャイで人目には余りつかないんだから♡だから、アタシはクラーケンの群れの中でずっと息を潜めていたのよ、それも中々いい暇つぶしになったわーん♡」


 「ぐっ…見た目に似合わないクッソムカつく口調、だけど、今までとは違う…!」


 (丸太の腕が更に大きくなって大の大人くらいある、腕の長さは…短く見積もっても2メートル程か?少なくともさっきみたいに攻撃を食らったら受け身を取る前に身体が千切れるな…)


 カイとケイは互いに顔を合わせ頷き、オーガに突撃して十字に切り込む。オーガは避けるそぶりも見せず、攻撃が重なる直前に熟練とも言える体捌きで応える。


 攻撃が寸でのところでオーガはケイに足払いをかけ、半身で避ける、そうすることで二人が鍔迫り合いをする形で重なってしまう。


 その隙を見逃さず、オーガは腕を振り下ろす。


 二人は互いに刀を払い、オーガとの距離を離す、地面に叩きつけられた巨腕はこのエリア全体にひび割れができるほどだった。


 オーガはグフグフと気味が悪い笑顔を浮かべながら、懐から長剣を取り出す、すると、あろうことかその長剣を自分の腹部に突き刺した。


 「なっ!!貴様何をっ!」


 自傷行為をしたオーガはカイの方へ向かい全力疾走する、その速さは先程とは大違いであり、カイがオーガがこっちへ向かってきたという認識さえも出来ずに直感のみで、衝撃に備える。


 「ハイドラ!!」


 オーガの拳が当たる直前ケイがハイドラを唱え、龍の如き水は圧力で拳を抑えるが、それすらも貫けて、カイに当たるしかし、ハイドラのおかげで防御態勢をとる時間が取れたのが救いだろう、カイは宙を舞い、オーガの背後を取り、一太刀を浴びせる、手ごたえを感じた。


 だが、それも致命傷にはなり得ない。傷口はオーガの分厚い筋肉に阻まれて深くまで届かなかった。


 オーガは更に自分の身体を傷つけて、こちらに攻撃を仕掛ける。


 オーガは自分の身体をわざと傷つけて、極限状態になることで、力を限界突破させて攻撃を仕掛けている。火事場の馬鹿力というやつだろう、先程カイが認識できなかったのがその証拠だ。


 二人は静かに目を閉じる、ほんの一瞬時が止まったような感覚に陥る。次の瞬間、オーガの皮膚がバターを切るように切り裂かれる。


 「いやあーん♡」


 その気味の悪い声などまるで聞こえないように二人はその眼を開く、その眼は両眼ともエキドナの瞳になっていた。額には漆黒の穴が開いたように、なっているがその額には何か力強いものを感じる。


 まるでその漆黒の穴は手招きをしているように、そして、その額には黒く何もかもを無に返す三つ目がオーガを睨む。


 その時、オーガの身体は切り刻まれる、身体中に無数の傷がつき、両腕や両脚もいともたやすく切れていく。


 「う、嘘よ嘘よ!!一つの時代を生き抜いたアタシがこんな所で―」


 そこまで言ったオーガの首はすでに息絶えていた。

 

次回5月3日月曜日予定

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