師弟の関わり
~第五階層~
「リネア、一つ言っておく、奴は魔法が殆ど使えない、だが、それが長所として成立している、身体強化を極めて魔法すら弾くほどの硬度と拳一つで半径20mはひび割れるほどだ」
「…つまり、攻撃させるな、攻撃を一切受けるなと?」
「どうだろうな、当たり前だが攻撃は必ず当たるとは限らない、射程も弓と槍じゃあ全然違うだろ、それが、外れることにも掛けるという事だ」
「でも、こっちからの攻撃はどうするの?魔法も弾く身体に何を持って対抗したら…」
「聞くまでもないだろう、こういうのを見据えてあんなに多くイイモノを持ってきていたんだろうなギリアは」
「はぁ…こういうのは製作者がやるべき事でしょうに」
「構えろ、そろそろ、あっちからしびれを切らして向かってくるぞ」
マーリンの読みは当たり、レトルダムルは一息で目の前に現れ、懐に飛び込んだと思うとそのまますり抜けて、後方のリネアの目前まで迫っていた。
「っ!」
寸でのところで後ろに飛びのくが、攻撃の余波の風圧はすさまじく、受け身を取るまでもなく床を転がり、互いに別々の壁際まで飛ばされる。
風によってほんの一瞬目を閉じてしまうが、この状況でその行動は命取りになる。
マーリンの真横にはレトルダムルの足が今まさに脇腹に当たろうとしていた。しかし、当たると思われた数センチ前でその足は動きを止める。
「…流石に隙をわざと見せたのは深読みさせるか、でも…!」
次の瞬間マーリンの服から何かが回転しながらレトルダムルの足を掠める。足の皮膚を削り取ったのは手のひらサイズのドリルだった。
「攻撃の反応に飛び出すセンサーが付いているらしいけど、寸止めされると、かすり傷しか、つけられないか」
リネアはその隙に、背後に回り、手斧を投擲するが、肩に当たったと思うと鋼鉄にでも当たったかのような金属が擦れるような音と同時に、一時置いてカランと斧が床に落ちる、よく見るとその斧は刃の部分が欠けておりその刃は斧本体より少し離れたところに落ちている。
(ドリルでもかすり傷だったり、トマホークでも傷一つつけられない、どれだけ硬いのよ、こいつ、オリハルコンでも身体に巻き付けてあるの?)
その後も常に身一つでとてつもない力を持つレトルダムルに二人は拳銃や、ボウガンなど、距離を取りながら応戦するが、それでも決定打に欠け、辺りには使い物にならなくなったナマクラが転がり、多くの武器は既にそのガラクタの一部になって転がっている。
「もったいない」
マーリンが呟く。
「もったいないと思わないかい?これだけ多くの武器が刃が無くなったぐらいでそこら中に捨てられているなんて、もったいないと思わないかい?リネア」
マーリンがそう言うとそれに応えるようにガラクタがカタカタと動き始める。
「…あぁ、そうだね、人間も物も文字通り「身を粉」になるまでの役立った方が作られた甲斐があったってものだよねぇ」
そこまで言うと、落ちていたナマクラが一斉にふわりと宙に浮き上がり、レトルダムルに向かい一斉に降り注ぐ。
サイキックレイン、多くの武器を絶え間なく相手に当て続けるオリジナルスキル、弾かれても魔力が続く限り、何度でも浮き上がり破片も何があっても、スキルと解かない限り、攻撃が止むことはない。
降りそそぐ武器は金属の音を断続的に続き、その様は清流の滝を思わせるほどの勢い、次第にそれらは弱まっていく。
「これで生きていたら、化物クラスを超えて悪魔クラスなんだが…大抵こういう場合って…」
マーリンの嫌な予感は当たり、そこには、多少の手負いはありながらも、悠然立っているレトルダムルが立っていた。
「もう、終わりかの?」
「…はっ、悔しいけれど、もう、魔力はほとんど残っていなくて、持って来た武器はほとんど使い果たしました…でも」
マーリンがクイッと首を曲げるとその先から太いレーザーがレトルダムルの腹部を貫く。
「でも、それが囮だと気づかないなんて愚かですねぇ」
撃ったのは魔力銃、それにレンズを重ねた貫けないものなど存在しない絶対貫通の弾、魔力を干からびるほど消費するため、一週間に一回が限度の奥の手だ。
しかし、それでも、レトルダムルを殺せる威力はない。フラフラとよろめきながらも、レトルダムルはこちらをにらみつける、その眼光は爛々と光り野獣の眼光の如く光りだった。
「これで、死なないとは驚きました、しかし、魔力が尽きたとは言っていないんですよ、俺」
次の瞬間レトルダムルの腹がバッサリと切り裂かれる。
「なっ!?なん…だ…これはぁっ!!」
「あなたが耐え抜いた武器の粉です、腹部を貫いた時、血止めになりますが塗りこんでおきました、それを固めて体内で新しい武器に作り変えました。金属杭の大型武器「パイルバンカー」に」
ボゴォとレトルダムルの腹は膨れ金属の杭が背中から肉と骨をブチブチと引きちぎりながら抜ける。
それと同時にレトルダムルの身体から多くの無形の何かが溢れ出る、それは溢れ出るように出て宙を舞う、それが、終わったことにはその身体は、干からびた手や足は枯れ木のような立っていることがおかしい程の老人の姿だった。
膝をつきながらもその何かに向かって叫び散らす。
「もっもどれぇぇぇい、貴様ら、戻ってこんかぁぁぁい、生きたいのだろう、死にたくないのだろう、儂はぁ、その願いを聞いたのだぞ、儂の一部として生きるように、その命を拾ってやったのだぞぉぉぉぉ、来い、儂と共にならまだまだ、生きられるぞぉぉぉぉ」
必死にそれらに向かって声を伸ばすとそれらは老人に向かう。それを見て老人は笑みを浮かべるが、それらは老人の首にまとわりつき、締め上げる。
「あ、あぁ、ぁぁぁああぁぁ…」
声にならない声と共に首の骨はいともたやすく折れて、その無形の何かは、霧散していく。その最後にマーリンの師である、レトルダムルの形が優しく微笑んだような気がした。
「っ…最後くらい、何か話して行けよ…くそじじい…でも、ありがとう」
次回4月26日月曜日予定




