表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は三代目魔王さまです  作者: 神坂将人
94/101

福音に不必要

~第三階層~


 「よっ、はっ、ほいっと」


 「っだー!このクソガキがぁ!ちょこまかと動きやがって、当たらねぇだろうがよっ!!おい、ダイン!少しこいつの動き止めろっ!」


 「無茶言わないでくださいよ、私もそうしたいのは山々なんですが、それも躱されて私としても苦笑いで濁すしか出来ないんですよ」


 「ちぃっ!的がちいせぇからかすりもしねえ、くそ、くそ、クソがぁ!!」


 「わぁ、危ない」


 アキトはヒュンヒュンと飛び回り、おちょくるような言葉をかけながら、一切攻撃をする気配がない。


 「オラオラオラァ!!」


 ホビルは武器を放棄して素手で殴り、躱されるたびに罵声を飛ばすことしか出来ないワンパターンと化していた。


 (相手の武器は薙刀、しかも、結構な業物ですね…地面に簡単に突き刺さるなんて、そのお陰で、身体を支えるようにして、紙一重でこちらの攻撃を躱す。体重は恐らく40kg前後、ホビルの大斧さえ当たれば、即致命傷に持っていけるでしょうけれど…)


 「よっと、当たらなければどうという事はない!」


 「ふんっ!やぁ!だらっしゃぁ!!あぁっくそぉぉぉ!!」


 (まずい、完全に遊ばれている。これじゃあ、泥沼試合だ。何とかその場に留めないと、何か相手の動きを止められるものは…)


 ダインはポーチの中を探る、すると、一つ、あるものを取り出した。


 (これは…?いや、待てよ。確かこれの使い方って…)


 「ほいほいほーい」


 「こんのクソガキァァァァァァァ!!」


 「このアトラクション段々飽きてきたなー、せっかくだから最後に全部壊してから、終わりにしよーッと」


 「…それで?」


 「なっ!?」


 アキトの頬にピピッと傷ができた。


 反射的にアキトは後ろに飛びのくが、右足の太ももにはパックリと大きな切り傷が出来ていた。


 (っ!なに!?急に動きが読めなく、なって…)


 「そこっ」


 「え」


 アキトが振り向くよりも速く、ダインは拳を振り抜き、鳩尾に叩き込む。


 「ナイスです。ホビル殿」


 「はっ、エンジンがかかるのに時間がかかったが、何とか間に合ってよかったぜ」


 ホビルには固有魔法が存在する、光断、自身の判断力を格段に倍増させる。その判断に要する時間は4マイクロ秒、つまり相手がどれだけ速く行動したとしても、判断力のみで、動きを読み、攻撃を叩き込む事ができる。


 「しかし、これが、役に立つ日がこようとは…小細工など邪道と思っていましたが、これに頼らずして、この戦い無し、とでも言いましょうか」


 ダインが取り出したのは糸、地下闘技場GPのケントが使っていた極細の糸、それを自分自身に巻き付けてこのエリアの壁という壁に突き刺す、糸の動きだけを頼りに相手の動きを探知し、そこに攻撃を当てることによって確実に相手を捕らえることができる。


 「っ…はぁ、しんっど…」


 光断にはデメリットがある。判断力を向上させるという事は五感を限界までフルに高速で使用しているため、味覚、聴覚、嗅覚、視覚、触覚のバランスが崩れて、身体の自由が一時的に無くなり、動けなくなる。


 「大丈夫ですか、今回復を…」


 助けようとした時ガラガラと音がする。音がする方を見るとアキトがゆらゆらと立ち上がり、虚ろな目で虚空を見つめている。しかし、その目には何かを成そうとする、意志が感じられる。


 「こいつ、まだっ!」


 すぐさま、武器を取り出そうとするダインをホビルは手で制す。


 「やめておけ、こいつにはもう、戦う力は残ってない」


 アキトは足は既にボロボロで薙刀も刃の部分が辛うじて残っている状態で、いつ死んでもおかしくない状態だった。


 「…おれは…役に立てなかった…みんな、みんな、受け入れてくれなかった…遊んでくれた人は…必ず途中で死んでしまう…おれは…おれは…」


 アキトは薙刀の刃を振り上げる。


 「ゴホッゴホッ…うぅ、う、うぁぁ、うあああああああああああああああああ!!」


 アキトは刃を振り下ろした。「自分」の心臓に。


 (役に立たないやつなど、福音には不要、自身の欲望のために、福音はならない。申し訳…ございませんでした…ぃ…ぁ…さ…ま…)


 「…惨めな最後だったな」


 「負けた途端、死を受け入れて、自害…魔王様がみたら発狂してましたね」


 「あの人に魔王としての器は何なのか、一度聞かれたことがあってな、魔人は王に何を求めるのか、それすらも生きていくことに関係ないって考えたこともなかった…でも、もしかしたら、そういう形骸化した考えはこいつにはなかったんだろうよ、信じたものに最後までついていく。それが叶わないなら、命すら惜しくない、こいつはその様に生きて、戦って最後まで生きた。その様は少しでも見習うべきなのかもな」


 「ホビル殿…」


 「さて、いつまでも、しんみりしていられねぇな、さぁ!魔王様達を追うぞ、うおっとと」


 「まだ、魔法の反動が残っているでしょう、少し横になってください、治療する時間はあるでしょう」


 「…チッ、情けねぇ、一番の新入りのてめぇにそんなことされるなんて、」


 「再生能力はあっても、反動などは治りませんからね」

次回4月12日月曜日予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ