暗闇の襲撃者
引き続き、果てのなさそうな暗闇の中を小さなランタンを持ちながら歩いている。今まで来た道を振り返りながら立てかけたランタンの灯りは消えていないだろうかと心配しながら、何回も振り返りながら、再び暗闇の中を歩く。
その時、今まで、硬い土を踏みつける音が変わりジャリと砂粒を踏みつける音が変わる。みんなが、その先をにらみつける。
そう、全員気が付いている。普段なら、そろそろ、外が近いのではないのだろうかと思うのだろうが、ここは、風が吹いていない、むしろ自分達の呼吸音すら聞こえるほどの静けさだ。それなのにいきなり他の人にも聞こえる砂の音が聞こえるのは明らかに変なのだ。
マーリンがコクリと頷くとロザリー姉妹が懐から槍を取り出して、暗闇の中に向けて投げる。
すると、小さく「グッ」と痛みに悶える音とそれに反応するように暗闇の奥へ逃げる足音が複数聞こえた。
「待てっ!」
その足音を追うようにマーリンが追う。
「ロザリー、ナナリーはこのまま、明かりをつけながら進んで、他はマーリンを追うよ、ついてきて」
『はいっ!』
急いでマーリンの姿を追う。
小さな灯りが揺れて、自分達の存在を唯一証明する光がまだ見ぬ先を照らし、その先を急いで、駆ける。
すると、しばらくして、マーリンの後ろ姿を見つけた。
「マーリンッ!」
「っ!シンシア様なぜ!?」
「急に走り出したら誰だって後を追うでしょう、それよりも、奴らは」
「まだ、走っています」
自分達の足音に紛れて、聞こえにくいが、まだ足音は坑道内に響いている。走りながら、足元を見ると、血痕が坑道の床に続いて、それを目印にしてマーリンは追っていたようだ。
「恐らく、奴らはこの坑道を常に使っているから眼が暗闇になれているような奴らです。私に追いつけない程の足の速さ、普段暗闇にいないと出来ない空間把握、一人負傷しただけで逃げる行動…闇討ちに適したやつです」
坑道という場所によっては適した人材と呼べる。普通暗い場所なら、灯りを持つのがいいと思われるが、戦闘を行うとすれば、それは悪手である。光があると自分の位置を相手に知らせてしまう、つまり、居場所をアピールしてしまうのだ。その為、普段から暗闇に目を慣らしている人たちからすればそれはただの的、やけに眩しい光という事だ。
しかし、そのようなことに今は思考を巡らせている場合じゃない。その足音を案内役にして外を目指すと同時に襲撃者の正体を突き止める。それがゴスペルの差し金かまたは賊のようなものかはどうでもいい、降りかかる火の粉は払わなくてはならない。
懐から拳銃を取り出し、暗闇の中に向けて撃つ、乾いた音が洞窟内に響くが今度は声が聞こえない。
撃ったのは基本射程が15mのグロックつまり、15m以上離れてしまったら、威力も狙った場所にも当たらない。つまり、現在相手との距離は少なくとも15mは離れている事が分かる。
しばらくして、暗闇の中を走ると光が見えた、あれが外への出口だろう、途中で道が分かれている事から戸惑いはしたものの血痕を辿る事によってそれを辿る事が出来た。
外に出ると同時に多くの人間に囲まれている事にすぐ気づいた。坑道に戻ろうにも、出口の両端に待機していた奴らに塞がれた。
「大人しくしろ、お前らを拘束する」
「断る、そんなことをする必要もないし、君たちにそんな力もない」
もちろん、それだけではない。
「その服…見覚えがあるぞ、たしか、サディーの中で見た自警団のピュグマイオイの正装だったか?」
「その通りだ、ギガスの奴らが騒がしいのが気になって、先回りしてみたが、どうやら、この坑道を通るとは、中々度胸があるようだ」
「その前になぜこんなことを?何も悪いことなどしてないけど」
間違ってはいない、人を殺すことは「この大陸」ではまだしていない。ただ、先回りして武装をした人間に拘束するなんて言うものじゃない。どうせなら「排除する」の方がしっくりくる。
「はんっ、知れたこと、我が軍門にくだりサディーからギガスの奴らを追い出し、ピュグマイオイが正式な自警団として君臨する。そうすれば金も名誉も上り、団長からの信頼も出来る!」
「なるほど、つまらない事だ。金とか安っぽい感情に踊らされているだけじゃないか」
「なんだと?貴様ら…俺らを侮辱したな…?許さん…穏便に済ますつもりだったが、仕方ない。お前らやれっ!半殺しにしてでも連れていけっ!」
『おおおおおおおおおおおおっ!!』
「やれやれ、やることは知っている。数で圧倒すれば、疲弊していつかは捕まるだろうって事でしょう?」
懐からある物を取り出し、上に投げる。
「アイテム9番使用!全員対ショック!」
『了解!』
それを聞くと全員が伏せ、眼と耳を塞ぐ、それとほぼ同時に投げたものは強い光を放ち、ピュグマイオイの視覚と聴覚を一時的に奪う。
その隙を無駄にせず、相手が人間であることを忘れずに手加減をして、襲ってきた奴らを返り討ちにして、結束バンドなどで拘束した。
次回1月25日月曜日予定




